―『-小学校英語-英語モジュールDVD 1』を使っていてよかった点を教えてください。
小学校の先生方の外国語学習に対してのハードルを下げることに大いに役立ちました。 何の準備もなしに、ただ見るだけという指示に少なからず混乱はありましたが、継続性を最も重視したため、この教材を採用して本当に良かったと思います。 ただでさえ多忙な小学校の先生に、新たな準備が必要な教材は、継続性という面ではかなりハードルが高いと思います。
―「歌・チャンツ」「アルファベット」「フォニックス」「動作と会話」という構成についてはいかがでしたか?
mpiの長年のアイディアがギュッと詰まった構成で非常に満足しております。
スパイラルメソッド※方式も言語習得においてはとても効果的な方法だと思います。 中学年においては放送設備を使用し、朝のモジュール学習時間帯にこのままの内容で使用し、高学年においては担任の先生方が、それぞれ必要な項目をアレンジを加えながら使用しています。
―DVDなどのICT教材は小学校での指導に役立ちますか?
非常に役に立つと感じております。驚くことに、モジュール学習を続けて一番音声に敏感になり、発音がブラッシュアップされたのが、小学校の先生方でした。英語の専科でない先生方においてICT教材を使用することが、これほどまでに効果的だったのは嬉しい誤算でした。 私個人としては学校現場において電子辞書以外のICT機材は、(投資した分ほど)活用できないと考えておりましたが、この場合においてだけはそうでないことを強く感じました。
―英語モジュールDVDの効果は使用している先生の発音にも表れたとのことですが、同DVDを使った英語活動での、担任の先生の役割についていかがでしたか?
英語モジュールDVDを始めた時には、担任の先生には「何もしなくていいです、一緒に見て聞いて歌ってください」との指示だけでした。しかしながら、いざはじまると、担任の先生方から、「こんなことをやってみたい」とか「こんなピクチャーカードがほしい」などの、意見がどんどん出てきました。
すべてがパッシブ(受け身)であった外国語活動が、まず先生たちの中からアクティブになっていくことを肌で感じることができました。もちろん、mpiの配信している指導案も参考させていただきました。
―英語モジュールDVDの特長の一つであるフォニックス(アルファベット名前と音)の活動についてお伺いします。 英語の音と文字を結び付けるこのような活動は、中学英語への助けとなりますか?
助けになるとは思いますが、時間の確保がとても難しいです。中学校は達成目標と試験がありますので、どうしてもその達成目標に入らないもの(試験に出ないもの)は先送りされてしまう傾向があります。
発音記号しかり、フォニックスしかりです。現時点での当校区の共通目標は、小学校でのアルファベット(文字と音)、中学校でのフォニックス学習の完了ですが、現在のスピードでは明らかに小学校のほうが先に達成されてしまうと思います。
私自身はこの5年間、小学校6年生と中学校3年生の一部を担当しているのですが、小6で教えた音声やアクティビティも、中3になればたくさんのテストなどの経験を経て、すっかり静謐な空間で、整然と授業を受ける中学生となってしまいます。これは中学校でコミュニカティブアプローチの考え方を基に、様々なアクティビティに取り組んでいる先生方には、共通の悩みだと思うのですが、秩序が最も愛される中学校運営とも、ある程度折り合いをつけなければならないところが、難しいところです。
しかも現実として、中学校の最終目標としては、高校入試の問題を解ける力をもつ生徒(高校生においてはセンター試験など)を育てることになってしまっているので、最終目標が変わるとされる2020年以降に4技能を確実に伸ばしていく指導法が、あらゆる面から求められるのかもしれません。
少し脱線いたしましたが、適切な時間が取れれば、音声指導(文字指導)において、小中が連携して行うフォニックス指導は、とても効果的だと感じております。
―英語の小中連携をスムーズに行うために、小学校ではどのような英語学習があるとよいでしょうか?
小学校の先生が外国語活動を大好きになってくれる英語学習が重要です。逆に中学校では、小学校での活動を理解して指導していかなければならないと思います。これは別に、外国語活動に限らず、小中連携ではとても大切な事です。
―小学校での外国語活動を成功させるためにはどのようなことが大切だと思われますか?
小学校の先生が、授業の題材として他の教科と同じように「外国語」を取り上げることができるようになることが大切だと思います。
小学校の英語教科化を機会に、日本の英語教育を根底から改革することに異論はないのですが、それを小学校の先生に押し付ける風潮は、とてもよくないと思います。「子どもにとって、初めての英語の出会いが雑ではよくない」と、いきなり専門性を上げてしまうと、英語嫌いの小学校の先生を多数生みだしかねません。そんなことになれば、英語教育にとってとても不幸なことです。冷静に考えてみて、どうして英語教育だけ特別扱いされるのか、私には不思議でなりません。小学校の音楽の授業が、社会の授業が、その道の専門家から見てはたして専門性の高い素晴らしい授業でしょうか?もちろんそうであれば最もいいのですが、そんなことはあまり重要ではないと感じます。それよりも「音楽って楽しい、社会って面白い、英語をもっと話してみたい!」と強く感じさせるような授業を行うことができれば、素晴らしい小学校の先生だと思います。そのために優先して磨くべき授業力は、英語の専門性ではなく、小学校の先生としてのスキルであって、その小学校の先生のスキルを用いて、取り上げるものがたまたま社会であったり、音楽であったり、外国語である、そういう状態がとても大切です。
―英語改革の結果が期待されている中、児童にとって、本当によい結果を導くために、解決していかなければならない課題もたくさんありますね。
課題は大きく二つあります。まず、英語・外国語活動だけを特別扱いせずに、教科化するならばほかの教科と同じように扱ってほしいと思います。「グローバル化に対応した英語教育改革」を本気で実施するなら、専科ではない小学校の先生に向けては、韓国のように国家予算での研修を全員に受けさせるべきなのですが、それは現実的に難しいようなので、それならば英語だけ極端な目標を求めるのではなく、他の教科と同等の指導ができるように心がけてほしいと思います。
もう一つは小学校文化を破壊するような導入の仕方はだめだと思います。小学校で蓄積されてきた教科指導を活かして、題材として外国語を取り上げるという形にしなければなりません。その時に中学校英語や児童英語のノウハウを参考にすることは必要だと思いますが、それらがとってかわる形になるのではなく、小学校の文化として新しく取り入れることが大切だと強く思います。
―小中学校の英語指導に関わってきた狩野先生だからこその現場の声を反映した貴重なご意見をたくさんお聞かせいただき、ありがとうございました。
最後に、英語モジュールDVDを用いて、繰り返しの英語学習を検討されている学校に何かアドバイスなどございましたらお願いできますでしょうか。
とにかくやってみることです、初めて自転車に乗ったことを思い出してください。乗る前にああでもない、こうでもないと悩まず、とっつきやすい教材から試してみて、だめだったら次に乗り換えればいいのです。できるならば、たとえばうちの校区の小学校で取り組んでいるように、放送設備を使用し、他のクラス他学年を巻き込んでやれば、共通で取り組む安心感を得られ、さらにたくさんのアイディアが生まれてきます。私たちも同様のことを行ったのですが、多くの学校が様々な取り組みを行っていますので、他の学校の情報を積極的に集めてみてもいいと思います。
どんなものでもそうですが、初めから満点は取れないので、取り組んでいくうちに少しずつ改善していけばいいと思います。先生方が英語を好きになれば、児童は必ず好きになっていきます。ぜひ頑張ってください。
※<スパイラルメソッド>とは---------------------------------------------------
mpiのカリキュラムで使用している「スパイラル」とは、1度で終わりにせずに、繰り返し練習することです。例えば歌の場合、2~3度の授業で上手に歌えるようになったから「終わり」とせずに、色々な場面でその歌を歌う機会を与えたり、歌に出てくる歌詞をゲームで使用したり、歌の発表をさせたり、と同じ素材でも様々な方法を実践することで、繰り返し授業に取り入れていきます。
カリキュラムで組んだ内容をエレベータで勢いよく上がるようにこなすのではなく、傾斜がとても緩やかな螺旋階段を歩くように指導するようなイメージです。スパイラルに取り組むことによって、無理なく基礎力がつき、学習者の自信にもつながります。歌、会話、フォニックス、など色々な題材に活用できます。
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