―英語特区の幼稚園、小学校、中学校では それぞれどのような授業(活動)をしていますか?
・幼稚園
遊びの中で、ALTと自然なコミュニケーションを交わし、英語感覚を育てる活動
・小学1、2年
身近な英語に慣れ親しみ、体全体を使って歌や遊びを楽しむ活動
・小学3、4年
歌やゲーム・会話のキャッチボールを楽しむ活動
・小学5、6年
目的意識や必要感を持って会話し、簡単な英語を読んだり書いたりする活動
・中学1、2、3年
「4技能」に磨きをかけコミュニケーション力の基礎を養う活動
を行っています。
それぞれALTが派遣されており、いずれもALTと担任もしくはALT、担任、JTEとのティーム・ティーチングを行っています。
幼稚園では、遊びの中でALTとコミュニケーションを取ることにより、子どもたちの英語感覚が育っています。そこで身につけた英語感覚が、小学校での活動へうまく繋がっています。
―どのような教材を使用していますか?
幼稚園、小学校低学年では『From Head to Toe』のような絵本を使ったり、ゲーム、遊びなどをしています。小学校中学年では『英会話たいそう』を使って、体を使って英語に親しむ活動や、
『The Very Hungry Caterpillar』などを使った絵本指導、カードなどを使ってフォニックス指導を行っています。
小学校高学年では、フォニックスワークを使ったフォニックス指導のほか、絵本指導『Thumbelina』、独自の自己表現の教材や“Hi,Friends!”を使って、実際に英語を使う場面を想定しながら、自分の言葉で英語を表現していく力を身につけています。
2月18日、名合さんが総社市立昭和小学校より異文化理解の講師として招かれ、低学年・中学年・高学年3クラスを対象にイースターの授業を行った際のお話もお伺いしましたので、以下ご紹介させていただきます。
昭和小学校校長 池上真由美先生
昭和小学校は児童数106人、7学級、職員数16人の学校で、校長の池上真由美先生は、大学時代に2回もアメリカに留学された経験をお持ちです。
英語が大変堪能で、外部からの訪問者にもいつもお忙しいなか笑顔で対応されており、他の先生方や児童にとってのお手本と言えるような、本当に素晴らしいコミュニケーション能力をお持ちの方です。
特区、イマージョン教育など、新しい困難な課題にも積極的に取り組まれて、先生方をしっかりと応援しているこの校長先生がいてこそ、同小で取り組んでいる英語活動の成果も出ているのだと実感しています。
教育委員会の力強いサポートと、子どもと真摯に向かい合う諸先生方の熱意もすばらしいです。 前校長は非常に組織作りに秀でた方で、教師間や委員会との関係・外部の支援者などの組織を短期間で見事に構築されました。
―イマージョン教育のお話が出ましたが、小学校では、外国語活動や特設教科である 「英語」授業のほか、どのような活動を行っていますか?
図工の授業を英語で行うイマージョン教育を実施しています。
また、オーストラリアにあるオークリー小学校との交流事業も展開しています。
―朝学習やお昼の時間、帰りの会の前など、帯時間を使う英語活動なども取り入れているのですか?
『朝の歌』を英語で歌ったり、英語朝会(校長が英語で話す)やお昼の校内放送を英語で行ったりしています。
他には、学習発表会で英語を使ったり、音楽発表会で英語の歌を歌ったりするなど、英語で“発表する場”を設けています。
4・5年生が、『アナと雪の女王』を英語で歌う発表をした際、他の学年の児童たちから「私たちも歌いたい!」との希望がたくさん出て、ALTの先生が他の学年にも教えに行くということが起こりました。担任の先生の指導への意欲も大変素晴らしい学校です。
また、希望者には英検指導を行っています。英検指導は民間の方に委託し、土曜日に公民館で勉強しています。準二級の試験に合格した児童もいます。
学校内では階段にアルファベットを貼ったり、窓に英語の日常会話を貼ったり、廊下にALTが作ったコーナーを設置するなど、英語環境づくりにも力を入れています。
★『英会話たいそう』のDVDを使った昭和小学校の授業の様子。96の基本表現を、歌ったり踊ったりしながらフレーズとジェスチャーで丸ごと覚えます。
名合さんが昭和小学校で行った異文化理解“イースター”のレッスンプランを、ここにご紹介させていただきます。
①イースターについて紙芝居を見せながら説明。
②外国で購入した卵と杓子を見せる。
③各列ごとにエッグレースをする。
④低学年(1・2年生)ボンゴゲーム
中学年(3・4年生)ビンゴゲーム
→この後、隣接したスペースで、エッグハントをする。卵を見つけて持ってきた児童には、シールをプレゼントする。
高学年(5・6年生)卵の色塗りをする。出来上がったらツリーに貼り、小学校のエッグツリーを作る。
グループで1セット色鉛筆を用意する。各自お気に入りの卵を選んで色を塗る。
鉛筆を取るときは下記のような会話をする。
“May I use a red pencil?”
“Sure.” “O.K.” “Go ahead.”
“Thank you.”
“I’m finished.”
色塗りが終わるとツリーのところにいる先生に渡す。
“Can you put my egg on the tree?”
“All right.”
レッスン当日、名合さんにインタビューをしてもらいました。
「英語の時間は楽しいですか?」 児童「楽しい!」
「英語は難しいですか?」 児童「簡単です」
「もっと英語を使えるようになりたいと思いますか?」 児童「はい!」
「英語授業の中で、どの活動が一番楽しいですか?」 児童「今日の授業の中では、ゲームとエッグハントの活動が楽しかったです」
とのことです。
インタビュー時の児童の声にも表れているように、昭和小学校が行った児童アンケートでは、「コミュニケーション活動に対して肯定的な児童が93%」という結果が出るなど、外国語に対して前向きで楽しいという児童が増加しています。
また今後は、
・国際交流などの本物体験を通した意欲の向上
・総合的な学習などと関連したカリキュラム整理
・文字指導の工夫
・職員の研修
などを目指して更に研究を進めていくそうです。
(総社市立昭和小学校『英語って楽しいよ!』資料より)
総社市の「英語特区」では、幼稚園、小学校、中学校と連携した教育を行うことで、子どもの発達段階に応じた言語教育ができることが大きな強みの一つでしょう。
幼稚園や低学年ではCD付きの絵本や歌のCDを聞いたり、ゲームや遊びを通して体全体を使って英語の音を吸収し、中学年では慣れ親しんだ英語の音やリズムからフォニックス学習に取り組んだり、会話のやりとりに挑戦しています。
更に高学年では英語で自分を表現する学習を行っていることが、中学での英語学習にも繋がっているのではないでしょうか。
子どもの興味や発達段階に合わせて英語を取り入れると、子どもは英語を「楽しい」と感じることができます。 また、達成感を感じることが、将来の英語学習への意欲に繋がります。
総社市の英語特区のような取り組みは、ご紹介した小学校の校長先生や先生方のような、児童を思う熱い気持ちで支えられています。その思いが日本の子どもたちにとって、大きな財産となることでしょう。
mpiではこれからも全国の先生方を応援していきます!
|