(株)mpi 松香フォニックス 教育アドバイザー
山口幹代
Q: フォニックスって役に立つんですか?
ある質問サイトに上のような質問が寄せられていましたので、今回はこれにお答えしたいと思います。
20年ほども前のことになりますが、近所に住んでいたアメリカ人の母親から、小2の息子さんの自慢をされたことがあります。「うちの子は、もう英単語が読めるのよ。すごいでしょう?」と。当時は理由がさっぱりわかりませんでした。
日本の子どもなら、幼稚園児でもひらがなを読める子はめずらしくありません。小学2年生ともなれば母語は読めて当然だと思ったのです。彼女が自慢した理由がわかったのは、それからだいぶ経って、自身がフォニックスを学んでからのことでした。
英語圏の子どもにとって、英語を話すことはできても「読むこと」「書くこと」は別問題。
とてもハードルが高いことだったのです!
英語の「読み」「書き」はどう学ぶ?
日本語の『ひらがな』は、文字と音とが1対1対応なので、ひらがなさえマスターすれば、どんな難解な文章であってもカナが振ってあれば読むことができます。ところが英単語の場合そうはいきません。
ネイティブの子ども達も日本の子ども同様、幼稚園くらいになると日常会話は問題なく何でもしゃべれるようになります。
ところが、読み書きは全くできないのだそうです。
そんな「話せる」けど「読めない」子どもたちの現状を何とかせねば!ということで19世紀に英語圏で考えだされたのがフォニックス学習法でした。
学生時代の、暗記しまくりの英語学習。役に立っていた?
ところで、皆さんは学生時代、単語をどうやって覚えてきましたか?
丸暗記だった方が大半だと思います。頻繁に小テストをされて、無理やりおぼえることを強制されたせいで、私も英語は暗記科目だと思い込んでいました。
しかも、外国語として学ぶ場合、単語一つにつき、①音 ②スペル ③意味の3つも(!)覚えることが必要になります。大変なワケですよね?
ところが、規則性がないから丸暗記せざるをえないと思い込んでいたものに実は規則性があったのです!!
それこそがフォニックス=「英語の発音とつづりの関係を学ぶ学習法」です。
とっておきの学習法、フォニックス
しかもその規則=フォニックスルールは、中学の教科書にでてくる単語の7割に適応できることが調査※の結果わかりました!!
(※少しデータは古いのですが、中学英語の6社の教科書1~3年の語彙のうち、フォニックスルールが適用できるものを一語一語地道に数えた調査 - (2007年調査結果©mpi inc)
英語圏の子どもたちの読み書きに対するハードルを下げるために開発されたフォニックスを学ぶことで、英語の「つづり」と「発音」の間にある関係性を知ることができます。
すると…私たち日本人にはうれしいメリットがいっぱい♪
- 英語の正しい読み方がわかる。
- 正しくきれいな発音が身につく。
- リスニング力が上がる。さらに
- 英語を聞いた瞬間に綴りが浮かぶようになるので、丸暗記するより単語がかんたんに覚えられるようになる。
私の教室では、小学3年生から「This is Phonics 1」というテキストを使ってフォニックスを学ばせています。
幼稚園や小学校低学年の保護者の方から、早くフォニックスを導入して欲しいとのリクエストもいただくのですが、ルールを理解し、未知の単語に応用させていくという抽象的思考が必要になるため、本格的に学ぶのは小3くらいからがよいと考えています。ただし、音に触れておくことは良いと思います。低学年のうちはフォニックスアルファベットジングルなど、音の世界のフォニックスに触れることは低学年から初めても問題ありませんし、むしろ推奨いたします。
mpi式フォニックスでは、最初にアルファベットのそれぞれに「名前」以外に「音」があることを学びます。例えば、Uの名前は「ユー」ですが、音は「アッ」(便宜上カタカナで表記しています)です。
同様にPの名前は「ピー」、音は「プッ」と教えるのです。すると、upが自然に「アップ」と読めるという具合です。
Uが「アッ」という音だと知っていれば、「bus」を「ブス」と読むこともなくなります(笑)。カタカナで書けばどちらも「バス」となるbusとbathも、最初から正しい音/u/a/の「音」で覚えていればつづりで悩むことも、聞き分けに困ることもなくなるのです。
「This is Phonics 1」はゲーム性に富んだアクテビティベースで構成されているので、子ども達の食いつきがとてもよいのが何といってもありがたいところ!!
たとえばSilent eを例にとってご説明すると…
- Silent eのルールは、ワークブックのページを折り曲げることで理解させる仕掛けになっています♪ワークブックを折り曲げる前は、前章の「一文字一音ルール」 の復習ページ。ページを折り曲げると単語の末尾にeがくっついて、新たに学ぶSilent eのルールが体感としてわかるという仕掛け。画期的なワークブックだと思いませんか?
This is Phonics 1より
Timがtimeに変身!
- また、男の子たちに人気なのがspeed readingのページです。リズムよく素早く読ませることで瞬時にルールの適用ができる力を養うのに役立ちます。戦い好きな男の子が単純にタイムレースに興じている間にルールの定着がはかれるなんて理想的ですよね!?
This is Phonics 1より
- 読めるようになったら「書く」ことにも挑戦します。ルールの箇所だけが抜いてある単語を提示し、CDの音源を聞いてルールを記入していきます。オープンクラスデ―(学期ごとのミニ発表会)で、ネイティブにより読み上げられた単語を我が子がスラスラ書く姿を見ると保護者の方には大変喜ばれますし、子どもたちも誇らしげです。
This is Phonics 1より
このように「This is Phonics 1」は子ども達がアクテビティを通してルールに自然に気づき、身につけられるように工夫されたテキストです。
その結果:
- たくさん聞いて耳を鍛えながらルールが身につきます。
- 単語や文章を自分の力でどんどん読めるようになります。
- 書く力がぐんぐんつきます。
通常のフォニックス学習は「読む力」、「書く力」をつけるものであることが多いのですが、この「This is Phonics 1」の場合、「聞く力」「話す力」も含めた4技能をバランスよく練習できるのも大きな特徴です。
フォニックス学習で4技能を学べるようになっている点は他の教材にはない強みでしょう。
欧米ではフォニックスは「読む・書く」のスキルを伸ばすものなので、音声データが教材についていなかったり、発音のポイントなどは載っていないものが多いです。This is Phonics 1,2は日本の子どもたちの特性を考えて、Listening(聞く)・Speaking(話す)・Reading(読む)・Writing(書く)の4技能を使って学習する仕掛けがあちこちにしてあります。子どもたちは「読む」の初期段階ではどうしてもトツトツ読みがちですが、Speed Readingなど読んだものをリズムよく言えるようになる工夫がしてありますので、子ども達がアクテビティを通してルールに自然に気づき、身につけられるように工夫があちこちにされています。
また、指導者にとっても、テキストに収録されているインストラクション自体が英語でなされているので、それをそのままなぞれば、英語だけでフォニックス指導ができるようになっています。これも特長の一つでしょう。
たとえば、
- Listen and write the polite vowels with your finger.
- Write the missing letters.
第二言語習得論では英語は英語で教えることが当たり前の指導法ですが、このような工夫のお陰で英語指導初心者の先生でも、あるいは親御さんでも無理なく教えられると思います。
保護者の方からは
「どうしてフォニックスのような便利なものを学校で教えないんでしょうね?」とか
「ABCソングを歌うより、フォニックスジングルを教えてもらったほうがよっぽど役に立つのに」
「フォニックスの学習をするようになってからは、街を歩いていても、テレビを見ても、目につく英語をなんでも、自分で読んでみようとするようになりました。自分で読めるのが楽しいみたいです!」
また、インターナショナルスクールに通いながらも単語が覚えられず困っていた保護者からは、
「短期講座に通っただけでずいぶん単語を覚えやすくなったみたいです。感謝しています。」
などのご感想が寄せられています。
受け身でなく、自ら学ぶ姿勢を育てることができるのもフォニックスのメリットですね!
実際に使っている先生にも聞いてみました。
「This is Phonics 1」を使ってフォニックス指導をしている有馬美紀先生にも、このテキストの感想を聞いてみました。すると、
私の教室の生徒達はspeed reading が大好きです。
こども達はちょっとした競争が好き。0.1秒を競う楽しい真剣勝負となります!
上手く言えないと、こども達から、
one more time please!
翌週も勝負!となることもあります。
とのこと。
- 英語を発音した瞬間に綴りが浮かぶようになるため、丸暗記するより単語がラクに覚えられるフォニックス。
- 正しくきれいな発音が身につき、リスニング力も上がるフォニックス。
- 自分から英語を学ぼうとする姿勢が育つフォニックス。
それらのことを考え合わせると、フォニックスは英語学習に役に立つと胸を張って言えると思っています。
まだお教室やご自宅で取り入れていらっしゃらない方は、是非「This is Phonics 1」を使って指導をはじめてみてください。きっとたくさんの収穫があると思います。This is Phonicsには2もあります。2冊でアルファベットから7つのルールまでカバーしています。
今回は、mpi教材の中から「This is Phonics 1」をご紹介いたしました。私のこれまでの試行錯誤が皆様のお役に立てれば幸いです。次回もどうぞお楽しみに!
記事を担当したのは。。。
mpi 松香フォニックス 教育アドバイザー 山口幹代
(株)mpi松香フォニックス 教育アドバイザー
mpiパートナー教室「えいごナビ」主宰
ロンドン大学 Institute of Education 教育学修士(MA)
国立九州大学文学部英語英文学科卒業
自己紹介
転勤族の夫との結婚で専業主婦に。夫の英国留学をきっかけに自らもロンドン大学大学院に進学するも討論形式の授業についていけず落ちこぼれ寸前。「これまでの学校での勉強はなんだったんだ?」と苦しむ経験をする。
失意の帰国後、子育ての中で「大量インプットの必要性」と「正確さより流暢さ!」を主張する松香洋子氏に出会う。「この方法で学べばしゃべれる!」「私が探していた英語教授法はコレだ!」と直感し同指導法を学ぶ。2009年より都内で英語教室「えいごナビ」を主宰。親に半強制的に連れてこられた子どもを対象に顧客満足度は親子ともども100%。「わずか数か月での上達にびっくり!」「終始子どもたちが楽しそうなのが何よりです。」「入会4か月で英語のプレゼンができるまでになりました。」等、喜びの声多数。この経験からmpiメソッドの効果を確信するに至る。
現在、自身が主催する英語教室のほかに、mpiのセミナー講師として活躍中。豊富な知識とわかりやすい説明で受講者満足度がつねに高い。
■広報からのお知らせ:
This is Phonics 1をご紹介する英語の先生向けのワークショップを全国4か所で開催しています。もっと知りたい方は是非mpi主催の子ども英語ワークショップ・或いは英語指導者養成セミナーにご受講ください。
▼教材をよく知りたい!方はこちら
子ども英語ワークショップ ~フォニックス~
▼指導法を学んでフォニックスの達人になりたい方はこちら
フォニックス指導法集中コース(全3回)
1回目 mpi式フォニックスのルールと発音を学ぼう
2回目 mpi式フォニックスをアクティビティを通して教えよう
3回目 フォニックスリーダーを活用して読む力を育てよう