mpi松香フォニックス
広報 M
英語学習に成功する5つの素因の検証も最終回となりました。
【1】 若い
【2】 母語が対象言語に似ている
【3】 外国語学習適性が高い
【4】 動機付けが強い
【5】 学習方法が効果的である
4月号で【1】【2】、5月号で【3】6月号で【4】と検証してきました
今回は最後である【5】「学習方法が効果的である」について考察したいと思います。
松香洋子は様々な機関で講演をさせていただきますが、講演会の主催者や参加者から半分冗談のように「中学・高校・大学と英語の授業を受けてきましたけど、全然英語が話せません。どうしてなんですか?」お声掛けいただくことがあります。その時の返事はいつも同じで「話すようになるための教育を受けていませんから、話せなくて当然です。」とお答えしています。質問された方は「え?話すようになるための教育と学校の英語教育って違うんですか?」というお顔をしています。こんな経験が皆さんもきっとあるはずです。
言語学者の白井先生も著書「英語はもっと科学的に学習しよう」で以下のように書いています。「海外に行かなくても、日本で英語はできるようになります。それは、ただ単に必要な学習ができるかできないかにかかっています(中略)英語が使えない人の理由は2つです。「やり方が間違っている、効率が悪い」「学習にかける時間が不足している」前者は学習法の問題、後者は動機づけの問題です。(白井: 2013 p16)
効果的な学習法のカギになる言葉は
「大量のインプット」と「少量のアウトプット」
この2つのキーワードを英語の4技能「聞く・話す・読む・書く」に則して考えてみました。
聞く -Listening-
耳がよい子ども時代に歌やチャンツ、CD付きの絵本や絵本DVDなど、やさしく理解ができて、子どもが何度見ても飽きない良質な音源がついて教材を利用して継続的で大量の音のインプットをしましょう。この量が多ければ多いほど英語力の土台がしっかりし、将来、英語力が大きく花開きます。
では、どうしたら大量の音声インプットを実現できるでしょうか? 教材選びは慎重になりたいですね。子どもたちが気に入っている教材を使うことが大切です。好きなものはいくらでも食べられるように、気にいったものは何度でも聞いてくれます。子どもたちの好きなトピックを、絵が魅力的・聞きやすいなどのポイントを押さえておきましょう。
1) 絵本でも歌でもイラストを見ながら、楽しみながら聞く
✔ 大人(先生・保護者)が楽しそうに一緒に関わる
2) 慣れてきたら音源と一緒に言ってみる
✔ 最初はモゴモゴやひそひそから始める
また、言葉の習得にはすべて理解できなくても自分の頭で「これはこういう意味かな?」「それともこんなこと言ってるのかな?」などと「推測」することが大切です。挿絵で意味が推測できる絵本は最良の教材の一つです。
また、英語らしさを身につけられる歌やチャンツは、自分が発話する際に通じる英語に導く助けになります。
(注意!意味のわからないものをいくら聞かせても無駄ですよ。子どもにCNNとかBBCを聞かせても、そもそもインプットされません!そして教材を気に入ってくれるようなプレゼンテーションは必要ですね。)
【mpiおすすめ英語教材】
話す -Speaking-
日本語と英語のように距離の遠い言語の場合、学習初期に自分で英作文をしてしゃべると、文法的にはまちがっていなくても誰も使わない変な英語になりがちです。そこで、有効的なのがチャンク学習です。「チャンク」とは固まりという意味。日常的に使われる決まり文句をその固まりのままインプットします。言語はインプットだけでは習得できませんから、アウトプット練習が大切です。チャンク学習でアウトプットしやすいものを身に付けると、実際にコミュニケーションを取る際もチャンクのまま、あるいは、チャンクをつなげてしゃべるのが手っ取り早く話せるようになる秘訣です。子どもが学習する場合にはチャンクに音楽が載っていると覚えやすく、身に付きやすいです。
学んだ表現を使って自分の言いたいことを発表することなどを習慣にするととても効果的です。(=学んだものを使う場所を用意してあげる)
1) スキットを作ってみる
✔ 大人が作ったスキットをコピーするのではなく、子ども達に作らせる
=言いたいことを表現
2) 作ったスキットを発表する
✔ 話すときは言葉以外(態度、声の調子、ジェスチャー)が必要だと自ら気づかせる
使える表現は少なくても、言いたいことをなんとか通じさせることにかけて子どもは天才的。幼児期のかわいい言い間違いは、知っている語彙が少ないから起こるもの。同じことを英語でやるだけなので、「学んだ英語だけでスキットを作ってごらん」と言うと、結構おもしろいものを作るのです。子どもの時から手持ちの英語力だけでなんとか通じさせるという経験(アウトプット)を繰り返すと、大人になっても、もてる英語力だけでなんとかできるメンタリティが育つのです。
【mpiおすすめ英語教材】
読む -Reading-
前述の2技能を生かしながら「読む」力をつける学習を進めてゆくことが大切です。一般的に「読む」をアルファベットから始める場合は多いと思いますが、単調にアルファベットを言う(読む)だけに終わらず、カードゲームなどを通して文字に楽しんで学習させます。文字への興味関心は実は個人差が大きいので幼児でも文字に興味をもって書きたがる子、小学生でも文字に興味のない子、文字学習は子どもに寄り添う必要があるところです。
アルファベットがわかるようになったらフォニックス学習に移るのが理想的です。『聞き知っている「音」と文字(または文字の組み合わせ)との間にはつながりがあるんだ!』と気づかせるフォニックス学習は、聞けばつづりが推測でき、つづりを見れば発音がわかるようになります。フォニックス学習はインプットがたっぷりあり、アルファベットもほぼ習得し、ルールが理解できるように成長した小学2~3年生くらいが適期でしょう。並行してフォニックスのルールだけで書かれたフォニックスリーダーと呼ばれる絵本を仕上げに取り入れ、読めたとう自信をつけさせます。その後、graded readersと呼ばれる英語学習者に適した読み物を大量に読む多読学習にすすみます。音声によるインプットから文字のインプットへ移行します。ここで大切なのは音声インプットも同時に行うことです。なので、単に読み物を与えて、さあ読みなさい、と言うのではなく、音源を使ったリピーティング、シャドーイング、その後にスラッシュリーディングや、スキャニングやスキミングなどさまざまな技法で学ばせるよいでしょう。『読む技術』を学びつつ、読む訓練を重ねることで長文を読み通す持久力が身に付きます。
1) アルファベットを歌・カードなどで学習
2) フォニックス学習
- キーワード
- フォニックスルールジングル
- 聞く・言う・読む・書く のアクティビィ
の3ステップで学習をぐるぐるするのがコツ
✔ フォニックス学習に適した単語を使って読む・書く力をつける
3) フォニックスリーダーから多読へ
フォニックス学習で読める力を付けた後は大量の文字インプット
✔ 子どものレベルよりもちょっと簡単なものを大量に読む
文字・単語を読む~長文を読んで情報を得るまで様々な学習法がありますが、教材は学習者のレベルから少し優しいものを使うことで学習が定着することが多いといわれています。
【mpiおすすめ英語教材】
書く -Writing-
フォニックス学習は基本的には「読み」「書き」の力を育むものなので、フォニックス学習時期から「書く」学習が始まっています。読むと書くは表裏一体です。読めたものが書けて、書けたものが読めるようなったら、次は自分の言いたいこと(言えること)を書くことを目指します。小学校4年生ぐらいから自己紹介文を書くなどから無理なく始めるのが良いと思います。
とは言っても、文法的な理解などは小学生のうちは低いので、英借文させます。中学生・高校生でも、日本語を英語に訳すのではなく、様々な英語のサンプルを提示して、それを借文しながら自分の意見や考えに近づけることで、文法的な間違えや、英語らしくない表現の使用を最小限に抑えることが通じる英語を書く力につながります。小学校高学年から中学生は「考えて・書く・伝える」のステップを取って、自分の意見・考えを書ける力を伸ばせるように現在の文法的に正しく書く力を伸ばすのではなく、自分の言いたいことを書ける力を伸ばすことが大切です。
mpiはこれが小学校高学年から無理なくできる学習法と教材を新開発し、この秋発売の予定です。
1) 英借文する 書いたものを言えるようにする。
✔ まずは真似して書いてみる
【mpiおすすめ英語教材】
まとめ
効果的な学習方法はフォニックスを学ぶ前後で大きく変わります。フォニックス学習前をPre-Phonics期、フォニックス学習期をPhonics期、フォニックス学習後をPost-Phonics期としてまとめ直してみましょう。
Pre-Phonics期 (2歳~10歳くらいまで)
この時期は一般に言葉の臨界期(10歳前後)と呼ばれる時期に重なります。理屈抜きに自然に言語を習得できる言語習得の黄金期です。逆に、分析的、論理的な説明にはまだ向かない発達段階にありますから、文法やフォニックス学習には適しません。この時期は音声を中心にトップダウン方式で大量のインプットを心がけましょう。トップダウン方式とは、全体を丸ごと与え、全体像をつかんでから細部を見るやり方です。細かいところは気にせず丸ごと真似できるところから真似る。ジェスチャーなどで非言語要素を大事にすることも学びましょう。英語を学んだら最後は人前で発表させるところまでをセットにしておくと発表の態度も育てられます。
Phonics期
音声の文字化の時期です。インプットされ体の中にたまった音声に文字の裏付けをしていきます。年齢に関わらず、フォニックス学習の前には英語の音に十分親しんでいることと、アルファベットの読み書きができるようになっていることが必要です。フォニックスはそのルールを習得すること自体が目的ではありません。フォニックスを学ぶことで英語を自ら読もうとする積極的な態度の育成や、その後の多読につながるよう指導していきましょう。
Post-Phonics期 (11~15歳くらいまで)
内容充実期。内容が命です!自分から手を挙げて意見を述べる姿勢と自分について発表することは、Pre-Phonics期からしつけてきていますが、この段階では、日本のことが世界に向けて発信できるよう内容を充実させていきます。言いたいことと言えることの差を縮めるための読書によるインプット技術を学び、まとまった分量の英文を読み通す持久力を育みます。プレゼン、スピーチなど、より高度な発表方法を学びます。聞き手を意識し、ユーモアをもった発言ができる等、国際的なコミュニケーションマナーも身につけます。
15歳でここまでのレベル達することを目指すのがmpiの9年間カリキュラムです。ここまで育てられれば、あとは、生徒自身の興味関心、必要によって、自ら英語で情報を取り、発信できる大人になっていくと思いませんか?
実は「英語学習に成功する素因―学習方法が効果的である」というお題をいただいたとき、あまりにテーマが大きすぎて途方にくれてしまいました。手あたり次第ヒントになりそうな本を読み漁ったのですが、情報はきれぎれ、まさに雲をつかむような状況で、困り果てていました。そして、ふとmpiメソッドを見直すと…その実践が効果的学習そのものでした♪ この稿をまとめて、mpiの9年間カリキュラムをより多くの方に、とくに中学生以降の生徒さんに体験してもらいたいと思ったことでした。