mpi松香フォニックス
広報 M
子ども英語を成功させるための科学 第2回
4月の第一回記事では、英語学習に成功する5つの素因のうちの、【1】と【2】について考察しました。
【1】若い 【2】母語が対象言語に似ている
【3】外国語学習適性が高い 【4】動機付けが強い 【5】学習方法が効果的である
今回は【3】からの検証です。
【3】外国語学習適性が高い
この外国語適性というのは、短期的に見て成果が表れやすいのはどんなタイプかを調べたもので、
①言語分析能力
②音声認識能力
③記憶力
の3つが優れていれば外国語学習に成功する確率が高いとされています。
ただ現実には、短期的には平均的だった学習者が後に超一流の使い手となったといった研究結果もあります。そもそも適性は「ある」「なし」の問題ではなく、相対的に高いか低いかの問題なので、あまり気にする必要はないと考えます。
ある程度の指導経験のある指導者なら、教え子がなんらかのきっかけで突然別人のように変わり急成長したという経験をしていらっしゃるでしょう。子どもは変わります。成長します。また、人によって得意な学び方も違うと言われています。
8つの知能(マルティプルインテリジェンス)を唱えるハーバード大学のガードナー博士をひくまでもなく、人によってある知能が高かったり、低かったりするのが普通です。その個体差の数だけ学び方も様々であるはずなのに、教育現場では、“言語的知能”と“数学的・論理的知能” の2つに偏りすぎているとの批判もあります。
白井氏は「様々な適性を持った学習者全員が、何らかの形で効果的な学習ができるよう、教師は最新の注意を払う必要があるのです。」と指摘しています(白井, 2012:18)
そう考えると、指導者がある時点の子どもの様子を見て適性を安易に決めつけたり、一つのやり方をすべての学習者に強いたりすることのほうが問題だとわかるでしょう。
大人ができることは、可能性を信じて英語習得に必要な条件を整えていくことに尽きます。
さらに、“必然性”があれば誰でも外国語習得は可能であるという文化人類学的研究報告もあります。日本のようなモノリンガル社会では、外国語ができるということが何か特別なことのように思われていますが、世界に目を向ければ、多言語話者の方がモノリンガルよりも数が多いのです(Bot & Kroll, 2002)。
“必然性”があれば言語習得が可能である一例として、以下を引用します。
(白井, 2012:19)
アマゾン地域のツゥカーノ語(Tukano)を話すある部族では、必ずすべての人が第二言語、第三言語をしゃべるようになります。その社会のしきたりで、同じ言語をしゃべる人と結婚してはいけない、という決まりがあるからなのです。そういう状況では、結婚したいと思えばだれでも第二言語を習得せざるを得ません。つまり外国語の習得は「条件さえそろえば」誰でもできるのです。
松香洋子(松香, 2000:57-58)も、以下のように私たち英語教師を戒めています。
「子どもに英語を教えたいけどうまくいかない。どうも思うようにいかない。」
そういう人は次の20のことを思い込んでいませんか。
親や先生ができないと思っているのであれば、子どもがそれをできるようになるはずがありません。
■思い込んでほしくない20のこと
- やっぱり日本語で説明しないときちんとわかっていない。
- (教師はともかく)子どもが英語のクラスで日本語を話すのはしかたがない。
- 英語のクラスで子ども同士で日本語を話すのはしかたがない。
- 子どもの方から親や先生に話しかけることは当面おこらない。
- 外国人の先生が来たらわからないことがたくさんある。
- 子どもは本当はいいたいことがあるのに英語ではいえない。
- 子どもには先生役などできない。
- 子どもは英語を知らないのだから親や教師が全部教えなくてはならない。
- 子どもは絵本を一冊読んだりしたら退屈して聞いていない。
- 子どもは集中力がない、もしくは短い時間しか持続しない。
- 子どもにはすこしずつ教えるしかない。
- 子どもはじっとしていない。
- 子どもは自分からは質問しない、できない。
- 子どもは自分でえいごのスキットをつくったりはできない。
- 単語をたくさん教えないとしゃべれない。
- 子どもは単語は覚えるけど、文はおぼえられない。
- 子どもは英語にカタカナをふってもしかたがない。
- 子どもは日本語も十分に書けないのだから英語を書くことなんかできない。
- 子どもには英語の読み、書きはむずかしい。
- のところ文法を教えないときちんとした文はできない。
英語学習の成功者を生み出すために我々ができることは、
4. 動機付けと5. 効果的な学習方法の提供の二つです。
4. の動機付けは次回に譲るとして、5. 効果的な学習方法として、mpiの教材はよくできています。
先に紹介したマルティプルインテリジェンスと、様々な個性と興味関心を持った発達途上にあるすべての子どもが活躍できるチャンスを、そのカリキュラムとメソッドの中で体現することを目指しているからです。
松香洋子は、子どもにはこんなことができると紹介しています。(松香,2000:54-56)
■子どもができる20のこと
- 英語だけのクラスで楽しく過ごす。
- 英語のクラスで日本語を話さない。
- 子ども同士でも英語で話す。
- 子どもの方から先生に英語で話す。
- 英語だけで外国人と楽しく遊ぶ。
- いえないことがあってもどうにか通じさせる。
- 始めから先生役ができる。
- 子ども中心のクラスは始めから可能。
- 全く文字の読めない子どもでも英語の絵本を楽しむ。
- 先生が絵本を一冊全部読むと、熱心に聞く。
- 絵本を1冊全部、テープを聞いておぼえ、いえる。
- 耳から聞いて英会話の表現をおぼえる。
- それを組み合わせてスキットをつくる。
- 質問に答える。
- 自分からも質問ができる。
- カタカナをふらないでも英語が読める。
- フォニックスがわかる。
- 英語を書き写せる。
- 自分のことについて英語で書ける。
- 子どもは分を使って自己紹介ができる。
正直申しますと、私自身も教え始めは半信半疑でした。
が、確かに上記のいずれも可能であることを目の前子どもたちが証明して見せてくれました。
どんな子どもも活躍できる、子どもへの愛があふれた子ども中心の授業。
楽しみながら英語を身につけていく子どもたち。
その姿に感謝してくださる親御さん。
子ども英語教師とは幸せな仕事だとつくづく思うのです。
mpi 松香フォニックス 広報 M
■参考文献:
白井恭弘 (2012)英語教師のための第2言語習得論入門 大修館書店
松香洋子 (2000)英語のできる12歳 松香フォニックス研究所