幼児は混沌期が大事
まず1人目はマリア・モンテッソーリです。
イタリアの医学博士であり、科学者、幼児教育者である彼女が開発したモンテッソーリ教育法は、昨今では教育界をはじめとして広く育児業界で注目されているので、ご存じの方も多いかもしれません。
彼女は、「赤ちゃんは混沌の中に生まれてくる。だから幼児期には秩序を与えなさい」と提唱した人です。
混沌とは具体的にどのようなことか。例えば色の概念が挙げられます。
赤ちゃんの目には、いろんな色が飛び込んできます。そのありとあらゆる色の混沌の中から、例えばクレヨンで限定されたような12色、赤・黄・緑・青・・・と、覚えていくのが『秩序』です。
対して『知識』とは、例えば5万字とも8万字とも言われている漢字を一つ一つ覚えていくことだとか、世界を人口の多い国順に並べていくことだとか、そのようなことが当てはまります。
『秩序』は、全体の中の関連性ともいえるでしょう。混沌とした大きなものの中から、順序や場所を当てはめていったり、関連性をはっきりさせていく行為が幼児は好きです。
そういった秩序には、他にも「形」「音階」「季節」「時計」「触感」などがあります。
四角であったり丸であったり、ドという音やレという音、などと、あらゆる混沌としたものを限定させていく、幼児期の学習はこれが基本です。裏を返すと、全てが混沌としている幼児に対して、『知識』といったものは与えてもムダだということになります。
この初期段階の『混沌』は、非常に大切で、それがなければ、その後の人生で大きなものを受け入れられなくなってしまいます。
幼児は身体全体を使って言葉を覚える
2人目はジェームズ・アッシャーです。
アッシャーは、1980年代にTPR(Total Physical Response)教授法を提唱した心理学者です。
TPR教授法とは、指導者が言ったとおりの動作をしたり、他の人が反応したりするのを観察することによって、ことばの意味を理解させる指導法です。
例えば、幼児が「水」という物を覚えるのは、「水だよ」と教えられた時ではなく、
「水飲みたい?」
「水持ってきて」
「水こぼしちゃダメだよ」
といったような会話を通して、理解していきます。
つまり、名詞を聞いて覚えるのではなく、動詞によって“体験する”ことで、身体全体を使って覚えていくのです。
日本の英語教育では、名詞を優先して教えてきた歴史がありますが、むしろ英語という言語を覚えるには、“This is a pen.”と習うのではなく、“Give me a pen.”や“Show me a pen.”の方が、幼児にとって分かりやすいということです。
幼児にとって全ては「音楽」
3人目は正高信男さんです。
現在、京都大学霊長類研究所の教授をされており、乳幼児についての研究でも有名な方です。正高さんは、幼児にとって全ては「音楽である」ということを提唱しています。
幼児というのは、「これはペンです」「あめんぼ、あかいな、あいうえお」などと言葉の持つ“意味”を教わることによって、言葉を覚えていくわけではなく、
大人が普段の会話の中で、声を上げたり下げたり、文節をくぎってリズムをつけたり、いわば言葉にメロディをつけているポイントに反応して、言葉を習得しているということです。
大人は、言葉から意味や内容を読み取ろうとしますが、赤ちゃんは、意味も内容もなく、つまりは「音楽」として言葉を受け取っていますので、
“This is a ball“の“This”の意味や“is”が何かを考えているのではなく、“Thisisaball”と聞き、目の前の丸いボールを認識しています。
トップ・ダウン方式・まるごとインプット
mpiの教材に、『アルファベットチャンツ』というのがあります。アルファベット26文字の「音」を練習する教材ですが、加えて、foxとfoxesなど、単数形と複数形の英語の音の違いも学べる教材です。
アルファベットの音、単数形、複数形、などと大人が聞くと、大変に難しいことを一辺に覚えなければいけないような気がしてしまい、本当に子どもにこんな教材が使いこなせるのか?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
実際、そういった意見は、発売前も発売後も少なくありませんでした。ですが私は、子どもたちの可能性を信じていました。
この教材は、「チャンツ」といって、日本でいう「手遊び歌」のようなリズムに乗せて練習するので、たとえ最初はうまく発音のできない複数形でも、繰り返し歌っているうちに、必ずできるようになるのではないかと信じていました。
事実、最初はうまく発音のできなかった子どもたちも、何度も音楽に合わせて繰り返しているうちに、発音できるようになることが分かりました。
ここに挙げた3人の提唱している事柄は、mpiの特徴でもあるtop-down方式の指導法や、歌やチャンツで英語をまるごとインプットする指導法ともつながっています。
幼児期にはこの3つが特に大事だということを改めて提言したいと思います。
“つい”自分から発信してしまう教材
さてここで、幼児期のみならず、日本での子どもの英語指導で必ずぶつかる課題をお話したいと思います。
長年、教育の現場で子どもたちと接していると、日本人は、“Let me try!”と自ら手を挙げることや、cut inが、先天的にあまり得意ではない民族なのではないかと感じることが多くありました。
日本人の子どもたちは、“Stand up!”と言われると、立つことはするけど、それと同時に“Yes!”や“Oh, Yeah!”と言いながら立つ、ということはありません。
このように、何か大人から言われた動作を行おうとするとき、同時に口々に何か話しながらやってしまうのは、他の国では往々にして見られる子どもの特徴なのですが、日本の子どもたちにはそれが滅多にありません。
そういった国民性を乗り越えていく教材の開発、つまり指示したことを理解するだけではなく、つい自分から何かをしたくなってしまう、といった教材を開発するのがmpiの今後の抱負です。
幼児期に身につけられる事柄を土台に、15歳になった時、また大人になった時に更にどのように伸ばしていけるか、mpiの長期教育カリキュラムの研究はまだまだ続きます。
☆今秋、mpiでは幼児用のコースブックを発売予定です。
皆様お楽しみにお待ちください!
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☆ 児童英語が日本を変える! 松香洋子著 『子どもと英語-増補改訂版』はこちらから
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