<短時間学習を考える>
理想の小学校英語とは?
時間がない、人材がいない、予算がない、設備がない、余裕がない、といった、すべての「ない」を一旦おいて、それではいったい理想の小学校英語教育とは何をどのように、どこまでやればよいのか、私の考えを述べてみたいと思います。
1 繰り返しを保証する
どんなに子どもが語学の天才でも、まったく英語環境がなく、まったくインプットがなければ何も学ぶことができないことは火を見るよりも明らかです。
これまでずっと子どもに英語を教えるという仕事をしてきて分かっていることは、
・子どもは繰り返しをいやがならない。
・子どもは耳がよく、真似が上手。
・子どもは楽しいと思えばいくらでも、どこまでもやる。
・子どもは意味がわからないことでも声に出すことができる
・子どもは、インプットがあれば、できるだけそれを使ってみたくなる。
・使ってみると楽しくなる。褒められればもっとうれしい。
・英語を分かった、自分の言ったことが通じたということはどんな小さなことでも子どもの大きな喜び。
・自分でわかったことは、絶対に忘れない。
・子どもは達成感が大好き。昨日できなかったことを今日はできる、ということが一番の喜び。
子どものこのような特徴を生かし、子どもがもっている力を最大限に引き出すには、「繰り返しを保証するシステムを子どものために確保すること」しかない、と私は考えます。小学校英語で何かができるようになる、わかるようになる、それが中学校での英語学習につながっていく、という状況を作り出すには、これが絶対的な要素だと考えます。
2 英語学習と日本語学習の相違点と共通点を考える
子どもたちは、英語を除くすべての学習を日本語でしています。学校でする様々な活動も日本語でします。そして家庭に帰ってからも日本語を使用します。子どもが学校に通っているのは、およそ1年の半分くらいですが、学校から離れても日本語から離れることはありません。会話もします。読書もします。すべてのことを日本語で行います。
英語は違います。日常的に英語を使う環境にある子ども、帰国子女、英語教室等で英語を学んでいる、といった例を除き、英語は年間に35回しか聞こえてこないし、口にしないし、休みの日には何のインプットもありません。
一方では、日本語も英語も言葉です。だからそれを学び、習得するのは、インプットの機会を増やし、学校でも家庭でもそれを使うチャンスを増やし、大人が見本を示し、子どもの体験を増やしていく以外の方法はありません。
3 それでは小学校英語の意義は?
①国際体験として
英語を年間に35回?70回、耳にして、それを使って、友達や外国人の先生たちと一緒の時間を過ごすという体験学習はとてもよいと思います。「人類皆兄弟」といった大きな理念にむかって、子どもたちの基本的な価値観を築くことはとても大切です。
②コミュニケーション活動として
4回くらいの英語活動を1つの単位として、様々なトピックにそって、そこで覚えた単語や表現を使って、限られた内容ではあるけどコミュニケーションを楽しんでいく、つまり、やりとりの体験をする、というのもとても価値のあることだと思います。
4 上記の①と②を支える「繰り返しの学ぶシステム」が必要
どんな子どもでも自信をもって、国際体験や、コミュニケーション活動に取り組み、そこで学んだことが蓄積されていくためには、それを下から支えるシステムが必要です。つまり、繰り返しインプットをして、それが自分のものになるように手伝うことが必要です。
日本の子どもたちは、日本語の力をつけるために、国語の時間で学ぶ他に、漢字の練習を繰り返し、算数を理解するためには計算問題を繰り返しやったりして、基礎力をつけていきます。このような繰り返しが保証されないと、どんな子どもでも学習成果を上げるということは困難です。
5 英語の短時間学習でやりたいこと
mpi松香フォニックス(以下 mpi)では、大阪府が開発した「DREAM」という名称の短時間学習向けの6ヵ年英語学習パッケージの開発・作成に参画させていただきました。http://www.mpi-j.co.jp/switch_on/ 大阪府以外では「小学校英語SWITCH ON!」 (以下、SWTICH ON!)という名称でmpiから全国の自治体・学校・教育関係機関に販売をしています。
この教材の基本概念は「繰り返しの保証」です。DREAM / SWTICH ON!の中で、それは「ラウンド方式」という名称で展開されています。
mpiでは、長年、「ぐるぐるメソッド」という概念を広めてきましたが、基本的な概念は非常に似た点があります。
このDREAM / SWITCH ON!という教材の内容は、毎回、ストーリーからはじまり、歌やチャンツ、アルファベットの学習、フォニックスの学習、文を読む、物語を読む、書く、自己表現をする、というもので、1年生から6年生まで、年間105回、6年間で630回の視聴をするものです。視聴するといっても、一方的に視聴するだけではなく、指導者からの声かけによって、子どもたちの自発的な学習が無理なくできるようにカリキュラムがデザインされています。
6 どのような方法でもかまわない
大阪府が子どもの英語力をつけるという目標をもち、短時間学習という仕組みを使って、ラウンド方式によって、子どもの自発的な「気づき」を育てていくという試みを始めたことは素晴らしいことですが、もちろん他の方法もあるでしょう。
どんな方法でもかまいません。それぞれの地域、学校、学級にあった方法で、何か漢字ドリルのような、計算練習のような、されど、子どもが自発性に英語に目覚めていくような仕組み、教材、チャンスを提供してほしいです。次々とトピックを通過していくという方式だけでない、何らかの補助が必要です。
7 なぜフォニックスが自律性を育てるのに適しているのか
読者の皆様もご存知のように、mpiは、フォニックス学習法を40年近くにわたって普及してきた団体です。英語環境のない中で、はじめは英語の音声にじっくり取り組み、それを文字へと転換していくというフォニックス学習法は、日本の子どもたちに絶対に必要なものだと思いますし、ぜひ、小学生の間に、できればすべての子どもが通う小学校で無理なく、楽しく学んで欲しいと考えています。フォニックスを小学校で、小学生時代に学ぶことで、中学校へ進学した時点で、英語の音声と文字の対応に積極的に取り組める生徒ができていることが理想です。フォニックス学習というのは、暗記をせず、カナ振りをせず、子どもが自立した学習者になることを促す学習法です。だからこれは短時間学習にぴったりなのです。
8 終わりに
45分の国際理解体験や、コミュニケーションを主体とした英語学習活動とそれを支える短時間学習による繰り返しの両方が整うことで、日本の小学校英語は身のあるものになっていくと信じています。
小学生が小学校に入学した時には日本語が話せているので、1年生から「読み」、「書き」を学んでいきます。しかし英語学習は「聞く」、「話す」、ということから始めなくてはなりません。そこに1つの大きな学習開始時期のずれがありまが、新指学習導要領では6年生の終わりまでには、英語の音声と文字の仕組みになじむことも求められています。つまり、語彙も表現も母語である日本語にははるか及びませんが、スピード感をもって、中学校へ進学する前に、音声と文字という二つの側面にふれておくことで、小学校英語の意義は明確になっていくはずです。
そして一番忘れていけないことは、学ぶのは子どもであるということです。だから大人が賢く関わって、あくまでも子ども目線で、楽しく、考えさせ、体験させていくことが大切なのは言うまでもありません。
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