2014年12月26日

コミュニケーションのための英語力
~英語教育改革と4技能評価
構成:mpi広報課
レポート:小学校英語の現場から

幼稚園から高校までの教育内容を大幅に見直す「次期学習指導要領」の改訂について、下村博文文部科学相が中央教育審議会に諮問するなど具体的な動きが始まっています。
特に英語教育に関しては、大きな改訂が期待されています。改訂が行われれば、小中高を通して、英語は「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能で評価されるようになり、大学入試も変わるとの見込みです。
また学習到達目標を「CAN-DO形式」で取り入れ、“英語の何を知っているか”ではなく、“英語を使って何ができるか”を評価の基準とするとの提言がなされています※。

mpiでは創立以来、“コミュニケーションのための英語”を指導してきました。
コミュニケーションのための英語とは、
・英語を知っているだけではなく使えること、
・自分の意見を理由とともに説明できること、
・自分から発言する国際的なマナーを身につけること、
・日本について誇りを持って説明できること、
・他の人を尊重すると同時に自分に自信を持っていること、
などがありますが、これらは正に、知識としての英語だけではなく、“英語を使って何ができるか”ということにほかなりません。

コミュニケーションのための英語を習得するには、従来の学校教育で行われてきた「読み」「書き」中心の指導だけではなく、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を伸ばす指導が不可欠だと考えます。
mpiは創立以来35年間、4技能を使って、コミュニケーションのための英語力を身につける教材を数多く制作してきましたが、今月はそのうち、『子供のための自己表現ワーク~Speech Adventure for Kids~ シリーズ』をご紹介したいと思います。

レポート:小学校英語の現場から

『子供のための英語で自己表現ワーク』は、先月の記事で取り上げた「発表教育」にも繋がる“英語のスピーチ”ができるようになる教材です。
教材のゴールは、小学生のレベルに合った英語を使い、人前で堂々と自分の事や考えを分かりやすく話すことができることを目指しています。 この教材で練習するさまざまな“発表”は、一方的に伝えるだけのスピーチではなく、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能に加えて「上手に人に伝える力と態度」を育てます。

シリーズは、1~3と3冊ありますが、それぞれ以下の力を身につけることができます。

*1でできるようになること
8個の基本QAができるようになり、最終的に10文の自己紹介ができるようになります。現在形でスピーチができるようになります。

*2でできるようになること
8個の基本QAができるようになります。2文で詳しく答えられるようになります。最終的に15文の自己紹介ができるようになります。相手のスピーチに対してコメントが言えるようになります。3人称を使ってスピーチができるようになります。

*3でできるようになること
8個の基本QAができるようになります。3文で答えられるようになります。最終的に20文のスピーチができるようになります。1つのトピックで長く話せるようになり、語彙も増えます。過去形を使ってスピーチができるようになります。

ここで、教材の中身が具体的に分かるアクティビティをいくつかご紹介します。

★スピーチを覚えるアクティビティ

●『子供のための英語で自己表現ワーク1』P11
作ったスピーチを暗記する練習です。
スピーチは、“意味を理解して”きちんと暗記することができて、初めて分かりやすく伝える工夫ができるようになります。このページでは、スピーチ前のリハーサルの仕方や、内容に繋がるアイコンを作成し、それをヒントにしてスピーチを進めるアクティビティができます。 スピーチをきちんと暗記し発表できたということは、生徒の自信と達成感につながります。達成感は学習者にとって、とても大切です。

●『子供のための英語で自己表現ワーク2』P18
自分で書いたスピーチを暗記するために、文をアイコン化していくアクティビティです。アイコンを見て英文を言う練習をします。このアクティビティを積み重ねていくことで、マッピング力を育てます。

★考えさせるアクティビティ

●『子供のための英語で自己表現ワーク3』P23
シリーズの中に出てくる質問は身近でシンプルなものが多いですが、どんなシンプルな内容であっても、生徒にどんどん考えさせていきます。シンプルなトピックでも、深く考えて書いたものと、あっさり書いたものでは、聞き手へのアピール力が変わってきます。 このアクティビティは、“地震が好きか?嫌いか?”という質問に対して、“なぜ?”とその理由を聞き、更に深く考える習慣をつけさせることを目的としています。

★プレゼンテーションへ繋げるアクティビティ

●『子供のための英語で自己表現ワーク3』P31
ポスターを見せながら話す練習をします。 スピーチの内容を絵や写真で見せることは、今後学習する“プレゼンテーション”の前段階の活動となります。スピーチだけでは伝わりきれないところを絵や写真で補うことを学び、言葉だけでなく、色々な手法を使って相手にわかりやすいスピーチを行うことを、この時期から心がけさせます。

mpiでは、英語を“使うため”に教えています。単語をたくさん正確に書けるとか、文法問題を間違えずに解ける力はとても大切な能力ではありますが、これは英語を話したり、聞いて理解したりする時の力には、あまり効果がありません。 未来からの留学生である子どもたちには、英語を使って人とコミュニケーションを取り、いろんなものを見て、いろんなことを感じて、自分の世界を広げていって欲しい。そのツールとして、英語を学んでいることに気づいてもらうためにも、人前で話す、人の言っていることを理解する機会をなるべく多くして、 発表教育を通して各々が積極的に英語を使おうという態度を養うことが大切です。そうすることで、おのずと文字にも興味が出てきて、英語を読んだり、書いたりしていくうちに英語を英語で理解する力が備わります。
言語学習は、「聞く」→「話す」→「読む」→「書く」の順に学習していくことが手順だと言われておりますが、発表教育はこのうち「聞く」「話す」に大きく関係してくるので、言語(英語)学習の初期から導入することに大きく意義があると考えています。

また、1~3のどのレベルでも、P4-5に“基本のぐるぐるチャンツ”が載っています。 テキストの中で使われる質問と答えを、まずは丸ごと言えるようにし(トップダウン方式)、大体の意味を理解します。この土台を築くことで、各ユニットで会話を膨らませていく際にスムーズになります。

その他、会話練習やインタビュー、インタビューレポートをするアクティビティが盛り込まれているのもこの教材の特長です。 スピーチは自分の考えを伝えるものです、自分の考えがなければスピーチになりません。
そこで、自分の考えをまとめるために、まずは他者へインタビューします。他の人の意見に耳を傾け、QA活動をして、自分の考えをまとめます。当たり前だと思っていたことを、一度立ち止まって考える癖をつけることで、スピーチとして伝えたいと思うトピックが増えます。

会話練習やインタビューレポートは、スピーチ前の発表練習をする活動として効果的です。
どんなに立派にスピーチが書けても、人の前で、或いは人と何かの活動をしたり人と意見を交わしたりする活動に慣れていなければ、伝わるスピーチにはなかなかなりません。 聞き手を意識して、聞き手と呼吸を合わせるようにスピーチできるようになるのがmpiの最終ゴールですが、その前段階として、小学生の時には人前で行う活動、或いは他者と関わる活動をなるべく多くして、経験値を上げていきます。

また良き聞き手になることが、良きスピーカーになるためには必要です。 ですから、上記のアクティビティに加えて、しっかりした態度で聞く練習も欠かさないようにすることがポイントです。

mpiでは小学4年生からこの教材を使い、“英語で、自分の事を自分の言える範囲で発表できる”ようになることを目指しています。 自分のことを英語で紹介することで、子ども達は自分達の世界を自力で徐々に広げていくことが出来ます。子ども達が自立した学習者になるための最初の1歩を、この教材で歩みだしてくれることを期待しています。

★『子供のための英語で自己表現ワーク Speech Adventure for Kids』こちらより

※参考資料:月刊『教職研修』2015年1月号 P63 L17~14(教育開発研究所発行)