こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2025年4月30日

英語嫌いが増えている

聖学院大学人文学部子ども教育学科
小川隆夫

新学期が始まり、大学のキャンパスを颯爽と歩く1年生の姿がまぶしく感じる毎日です。

この春、小学校外国語は教科になって5年目に入りました。子どもたちは英語にすっかり慣れて楽しく学習しているだろうなと思っていましたが、和歌山大学名誉教授の江利川春雄先生によればそうではないようです。先生が書かれた東洋経済education×ICT(2025年2月5日)の記事「深刻な学力格差、英語嫌いの子が増えた根本原因 英語教育学の専門家が戦慄した調査結果の数々」を読むと英語嫌いの子どもが多いことに驚きます。

文部科学省の全国学力・学習状況調査で「英語の勉強(学習)は好きですか」との質問に否定的な回答をした6年生は教科になって2年目の2021年度は31.5%、2013年度は23.7%で好きではない子どもが8ポイントも増えていました。もちろん単純に比較はできませんし、2021年度はコロナ禍でどの学校も授業に苦労していましたのでその影響もあると思いますが、高学年で教科書を使い評価も行われていますので、この8パーセントは深刻に受け止めるべき数字だと思います。

江利川先生はその要因を児童に負荷をかけ過ぎていると述べています。学習指導要領に定められている新出単語が600~700語と多すぎ、塾で勉強を補えるかで成績が二極分化して英語格差が生じているうえ、小学校英語の受験英語化が影響していることも取り上げています。入試科目に英語を加えた首都圏の私立中学校は、2014年度は15校でしたが2023年度にはなんと141校となり約10倍に増えたそうです。全員が挑戦するわけではない私立中学校の受験英語が子どもたちの英語学習に負担になっているとは気づきませんでした。

しかし、実は中学校がさらに深刻で、小学校段階で英語嫌いになった3割以上の生徒が入学してくることになり、クラス内での英語力格差が大きく、授業のレベルの設定が難しくなっているようです。中学校での単語数は小学校外国語で扱った600~700語を含む2000~2500語となり以前の2倍の単語数で、多くの生徒にとってこれが高いハードルになっており、さらに高校から下ろされてきた現在完了進行形や仮定法などがさらに負荷をかけているとか。実際、2023年度の中学校3年生の文部科学省の全国学力状況調査英語(聞く・読む・書く)の平均正答率は46.1%、旧学習指導要領下で行われた4年前と比較して10.4ポイントも低下。「書くこと」は24.1%で22.3ポイント低下、抽出実施された「話すこと」は正答率が12.4%で、18.4ポイント低下したようです。そのうえ「話すこと」の正答数分布グラフ(横軸:正答数、縦軸:生徒の割合)を見ると生徒の6割以上が0点という結果でした。「話すこと」こそ小学校外国語での経験を活かして得点が上がっても良いと思われますが、0点の生徒が6割を超えるというのは考えさせられます。

現在、2030年度からの教育課程の準備が進んでいると思いますが、日本の子どもたちの英語教育をどのようにすればよいのか今一度振り返る時期に来ているのかも知れません。江利川先生は次期学習指導要領のポイントは「いかに英語嫌いをつくらないか」であり、小学校では教科の外国語を外国語活動に戻すことや音声中心の外国語に親しませること、外国語を教科として継続するのならば、授業時間の再考、指導内容の精選、児童英語教育専門家の配置など、制度設計の抜本的な見直しが必要であるのと述べています。

私は今こそ日本の子どもたちにふさわしい外国語科を作る時だと考えます。英語が使えるグローバル人材を育成するという名目で、アクセルを踏みつづけていくとさらに多くの児童生徒が英語嫌いになるのではと危惧します。デジタル教科書が紙の教科書に代わり、一人でできることが多くなると自然に自分一人でやる課題も多くなり英語力格差がさらに広がり、外国語を苦手に思う児童生徒の負荷が重くなることが予想されます。

ひと昔前、先生方が工夫しながら楽しい英語活動をしようと教材研究を頑張っていた頃、子どもたちが小学校英語を一番楽しんでいたと思います。英語が大好きな子どもたちが多かった時代を懐かしく思っています。


参考文献

江利川春雄 東洋経済education×ICT(2025年2月5日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/b9f03a7e060e2987eedb37b6ad12481042b33c7c?page=1

国立教育政策研究所 令和5年度 全国学力・学習状況調査 報告書【中学校/英語】
https://www.nier.go.jp/23chousakekkahoukoku/report/data/23meng_02_k.pdf


レポート一覧に戻る