こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2017年9月21日

台湾の若い人たち、英語が上手になった!

聖学院大学
小川隆夫

秋が駆け足でやってきたという感じがするこの頃ですが、読者の皆様はお元気でお過ごしでしょうか。2学期も始まってあちこちの小学校で研究授業が行われています。私は先週も都内の小学校2校に行きました。まずはちょっとその学校の様子から。

1つ目の学校は都心も都心ですが、そこの校長室で私を迎えてくれたのは写真のこの子でした。そうPepper君です。なんとまあ、これは校長室にいる1号機君で、職員室と各学年にも1人(1台?)ずついるそうです。ちなみにこれはロボットの会社が研究改良のためにモニターとして提供しているようで購入しているわけではありません。授業が終わって校長室に戻ったら踊ってくれました。かわいいです!

この日は日本語でしたが英語で話すプログラムもあるそうです。ロボットも何人かいると個性がはっきりしてくるようで、職員室のPepper君はいつも先生たちが忙しくて相手をしてくれないのでだんだん性格が悪くなっているのだとか。校長室のこの子はみんなが可愛がるので良い子らしいです。近い将来、どの教室にもロボットがいるようになるのでしょうか。

 

さて、もう1校はPepper君の学校に行った翌々日に行った学校です。こちらにはPepper君はいませんでしたが、高層ビル街と出来たばかりの近代的な校舎が待っていました。ランチルームからはオリンピック・パラリンピック選手村の建設地が見えます。
日本中、いろいろな地域の学校に行きましたが、この2校はかなり印象に残る学校でした。

さて、ここから今回の本題です。9月4日から7人の教え子たちを連れて台湾に行きました。7年ぶりの台湾でしたが、あいかわらず活気に満ちていました。到着早々、若い人たちの英語力がかなりアップしていることを実感しました。特に台北でそう感じました。

そんな折、偶然、日本から進出している子ども英会話学校のスタッフと話をする機会がありました。最近ではコンビニでアルバイトしている学生でも、きちんとセンテンスで話してくれ、外国人とやりとりができる人が増えたそうです。やっぱり私の直感が当たっていたのです。

それでは台湾は子どもたちにどんな英語教育をしているのでしょう。
台湾は2001年から5・6年生に英語を導入し、2005年から3・4年生にも導入しました。授業時間は、一応5、6年生は週2時間(45分×2回)、3・4年生は週1時間なのですが、1・2年生でも2時間までやることができます。また、3・4・5・6年生は2時間まで増やせますので、5・6年生は最高で週4時間まで英語の授業をやることができるシステムになっています。このように各学校によって授業時間数が違うのです。

 

しかし、英語教育を進めるに当たっては、台湾でも難しい問題があるようです。
1つ目が質の高い英語教員の確保だそうです。台湾では当初TOEFLなどの試験を経て選ばれた3,500人を採用し、小学校教員になるように養成しました。教員予定者は360 時間の研修を受け、一般教養40 単位時間取得した後、1年間の教育実習を行う必要があったそうですが、この長く厳しいプロセスを経て、教員になったのは1,400人だったそうです。以前、松香洋子先生が話してくださったことによると採用者には優秀な人材が多く、一流企業でも採用されるような人たちだったため、みんな好条件で賃金の高いそちらに流れたらしいです。これと同時に教育部は現職小学校教員にも自分で可能と判断すれば英語を教えるように促しました。そして、台北教育大学などいくつかの大学で小学校の英語教員養成プログラムがスタートしました。そうこうするうち、今度は、教える教員の英語力がまちまちになってしまったということと質の高い英語教員を採用する財源が不足していると問題が起きたようです。その解決のための施策が小学校英語教員を専門職として認定する取組で、小学校で英語を教える専門の資格を持った教員のみが、小学校で英語を教えられるようにするということです。

2つ目が児童間の英語力の差が大きくなったことのようです。これは各家庭の財力による差が大きく影響して、差が広がっているそうです。同じクラスの中にかなりできる子と遅れがちの子が一緒にいるという状態です。裕福でいくらでも外で勉強できる機会がある子もいますし、学校以外で英語に触れる機会がない子もいます。実際、前述ように日本の子ども英会話学校が台湾に進出しているという事実がありますので、子ども向け英会話はきっとビジネスとして成り立つのでしょう。私たちの現地ガイドによると台湾では貧富の差が80倍あるそうです。それが小学校英語教育に大きく影響しているわけです。現在、これには補習プログラムで対応しているようですが効果はどうなのでしょう。また、農村部の学校と都市部の学校の財源の格差も深刻な問題のようです。農村部では、子どもたちは学校以外で英語教育を受ける機会がないにもかかわらず、質の高い教員の採用、維持が厳しい状況になっているそうです。義務教育の公平性からもこれは大きな問題ですね。

台湾が経験していること、努力していることは日本でも参考にできることが多いようです。現地ガイドは、日本語と英語とドイツ語ができるそうですが、中国語と英語の語順が似ているので勉強は日本語より英語の方が楽だったと言います。もちろんそれなりの努力をしたのでしょう。今の台湾で人より多くの収入を得るには、IT系の大学を出て外国語を話せることが条件だとか。
早く日本も訪日外国人から「英語できる若い人が増えたね。」って、言ってもらえる時代になって欲しいですね。
気温差が大きい毎日です。皆様、どうぞご自愛ください。


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