こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2012年7月6日

TT(ティーム・ティーチング) | mpi

2012年7月6日
TT(ティーム・ティーチング)

J-SHINE小学校英語育成トレーナー
常葉学園短期大学非常勤講師
mpiパートナー会員
溝口良子

レポート:小学校英語の現場から

「1人でレッスンしたい!TT(ティーム・ティーチング)なんて考えられない!!」
 昨年9月、名古屋のJ-SHINE フォローアップ講座に参加した大阪府の小学校の先生の言葉でした。
私が担当したワークショップ「TT(ティーム・ティーチング)の進め方」に真っ向から挑戦状が届いたのです。

TT(ティーム・ティーチング)、皆さん経験されたことはありますか?
世界的に見ても英語の授業をTT(ティーム・ティーチング)でレッスンしている国は大変珍しい。
実際、TT(ティーム・ティーチング)と言ってもHRT(担任の先生)& ALT(外国語指導助手)、HRT(担任の先生)& JTE(日本人英語指導者)、HRT(担任の先生)& ALT(外国語指導助手)& JTE(日本人英語指導者) など異なります。
事前に十分な準備や打ち合わせが出来ない状態でのレッスンはお互いに不安やストレスを伴います。
英語に関心や自信を持っていらっしゃるHRT(担任の先生)であれば1人でレッスンした方が・・・と言いたくなるのでしょう。 「なぜ、あえてTT(ティーム・ティーチング)なのか?」

児童の立場から考えてみましょう。
「習うより慣れろ」と言う諺がありますが、児童にとって先生方の英語でのやり取りがコミュニケーションの見本になります。自分たちの担任の先生が、一生懸命英語で気持ちを伝えようとがんばっている姿を目で見て、耳で聞いて、表情で雰囲気感じます。上手じゃなくてもやってみよう。そんな気持ちになれたらいいですね。
特に発表教育、情報交換、アクティビティー紹介の3つではTT(ティーム・ティーチング)が有効に活用できます。
<発表教育>
児童の体調、性格など1番把握しているのはHRT(担任の先生)です。司会進行をしながら、誰に当てるのか、話を聞いてない児童をどのように集中させるかクラスマネージメントはHRT(担任の先生)の出番です。また、前に出て発表するだけが発表教育ではありません。聞く姿勢(興味を示す。相槌を打つ。質問する。褒める。)こう言った事を実際にやって見せてあげましょう。
<情報交換>
お互いに知らない情報を出し合う、違う意見も認め合う。言葉のやり取りを楽しむ絶好の機会です。担任の先生はスーパーマンではありません。知らない事だってあるし、間違える事もある。素直に間違えを認めたり、より多くの事を吸収しようとする姿勢は、児童の心に深く残る事でしょう。
<アクティビティー紹介>
英語だけでレッスンをする事に不安はありませんか?
言葉に頼った説明は、児童を不安にさせ、混乱させることがあります。先生同士が実際にやってみせるのです。1人では出来なくても、2人、3人なら無理なく見せる事が出来ます。

次に、指導する立場から考えましょう。
「コーチング」という言葉を聞いたことはありますか?

スポーツの世界を見てみると、人間が独力で完璧をめざすのは非常に難しいと考えられます。アイスフィギュアスケートの国際試合を見ていると、選手と同じ様にコーチも画面に写されます。テニスの錦織選手も、水泳の北島選手もパーソナルなコーチに支えられています。一流の選手には、客観的に分析できる素晴らしいコーチが付いているのです。

有名な作家の陰には、優秀な編集者がいる事を、ご存知ですか?
コーチは編集者に似ているとも言えます。スクリブナー社の編集者、マックスウェル・パーキンスは、スコット・フィッツジェラルドやアーネストヘミングウェイを発掘し、育て、出版した人物です。
かつて、パーキンスが担当した作家がこう語ったそうです。
「パーキンスには作家に自信を与える不思議な力があった」

1980年はじめ、アメリカ、カリフォルニア州の研究者達が80校を対象に5年かけて教師の能力に関する調査を実施しました。その結果、ワークショップを催して教師に新しいスキルを教えても、そのスキルが実際に教室で使われる割合は10%程度。練習セッションを設けても20%を超える事はなかった。コーチング(同僚が教室に入り、教師が新しいスキルを使うのを見たり、アドバイスしたりするのを見る)を導入すると、新しいスキルを使う割合は90%を超えた。教師にコーチを付けると、授業が効果的になり、児童のテストの成績も上がった。(The New Yorker, Text by Atul Gawande)

教室にTT(ティーム・ティーチング)する2人の先生がいるならば、お互いにコーチングする絶好の機会があるのです。特別な事をしたり、時間をかける必要はありません。いつものレッスン前の打ち合わせで、前回の注意点をお互いに確認しましょう。そして、レッスン終了後、良かった点(とても大切です)、事前に話し合っていた注意点が改善されたか、新たに改良する点があったか、話してみましょう。教室を出て、次の教室へ向かうホンの数分で良いのです。

「TT(ティーム・ティーチング)絶対反対!」だった大阪府の先生は、静岡で行なった私の自主開催講座にも来て、TT(ティーム・ティーチング)のデモンストレーションをしてくださいました。
「TT(ティーム・ティーチング)推進派!」に向けて1歩前進です。また、お会いするのが楽しみです。

J-SHINEのトレーナーは、それぞれ異なった活動をしています。私の様に短大で教えている者もいますし、松延先生の様に実際に小学校で授業をしている方、民間の英会話学校で活躍されている方、大学院で勉強している方もいます。
名古屋、大阪、東京、福岡で開催されるJ-SHINEフォローアップ講座は、受講生が学ぶ場であり、又トレーナーにとっては、受講生をコーチングする場、トレーナー同士がコーチングし合う場でもあります。違うフィールドに立つ者だから気づく事、普段見落としてしまう事を遠慮なくぶつけ合います。2年前、名古屋J-SHINEフォローアップ講座で、私がワークショップを担当した後に松香洋子先生から3枚のコピー用紙(先生がいつも持っているノートをコピーしたもの)を頂きました。
そこには、びっしりと私のワークショップの内容と注意点、改善点が書き込まれていました。
この3枚のコピーは、私にとってかけがえのない宝物となりました。
なぜなら、私が培って来た約20年の子ども英語の経験と匹敵する程、考えるヒントと課題が詰まっていたからです。

皆さん、J-SHINEフォローアップ講座参加してみませんか?
きっと、何か見つける事が出来ますよ!

☆J-SHINEフォローアップ講座の詳細は こちらより


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