英語の“秘密のルール”を見つけて、読む力をレベルアップ!
この連載も早いもので4回目となりました。
「指導者が教えない」という前提で進める実践記録も、いよいよ後半となりました。
使用しているのは、昨年9月に刊行された『小中学生のための発音トレーニングブック』です。
対象は、これまで学校以外で英語学習の経験がない中学1年生のMさんです。
私とMさんが直接関わるのは、月1回・30分程度。
・学習の進み具合の確認
・次回までの進め方の相談
・疑問点への対応
・簡単なインタビュー
この時間にすることはこれだけです。
実際の学習は、すべてMさん自身が自宅で進めます。テキストを使い、スマホで音声や動画を視聴しながら、繰り返し取り組んでいます。
私の役割は「教える人」というよりも、学習の道筋を一緒に整理する伴走者のような立場です。
取りくみが始まって3か月あまり。自主学習を中心にしながら、フォニックスを通して読む力はどのように育っているのか。そして、英語への気持ちはどのように変わってきたのかについて丁寧に見つめていきます。
第4回目のご報告です。
第3回目(前回)までにMさんが習得したこと
前回までに、Mさんが取り組み、習得した内容は以下の通りです。
① 2,3番 フォニックスアルファベット
② 9番-35番 子音(音をつなげて単語を読むブレンディング)(p16-59)
①に関してはフォニックスの基本の「き」ということでじっくりと時間をかけて取り組み、26文字の名まえと音をマスターしました。Mさんは特にP10をくりかえし練習してくれたそうで、口の開け方に意識しながら正しい発音のしかたを身に着けました。
3回目からは、いよいよブレンディングへ。ページ数だけを見ると量が多く感じられますが、すでに文字と音の対応を理解していたこと、学校で出会っている単語があったことから、「音をつなげる」感覚がわかると、自分の力で読み進められるようになっていきました。
このテキストは、上から下に①から⑤まで進んでいくいわゆる「たて読み」方式で、どのページも同じ手順で進みます。子音21文字のすべてのページが、
① 聞こえた音をまねしよう
② 聞こえた単語を絵で確かめよう
③ 聞こえた音を指さそう
④ 指さしながら言おう
⑤ 指でなぞりながら単語を読もう
のように、同じパターンです。また、書き込みをしないので何度でも繰り返せます。この反復練習を自分で行うことにより、前回に比べ、発音にも安定感が出てきました。
第3回(前回)の課題について
第3回の課題は, 以下の内容でした。
・43-52番の短母音
・57-62番のStory(パワーワードを意識しながら簡単なストーリーを読む)
・時間があればサイレントeがどんなものかも見ておくこと
開始前のインタビューより
鈴木:前回は音をつなげて読むブレンディングの練習をしましたが、効果は感じていますか?
Mさん:これまで、なんとなく「こうかな?」と思って、何となくあいまいに読んでいた単語が、自信を持て読めるようになってきました。それぞれの文字の発音ができるようになったから、自信をもって単語を言えるようになりました。
鈴木:それができるようになって、どんな変化がありましたか?
Mさん:んー。すっきりした感じ。
鈴木:それはうれしいね。
Mさん:はい。
鈴木:自主学習を家で進めることには、すっかり慣れた?
Mさん:はい(力強い返事が返ってきました)
鈴木: 3回目の最後に「単語の次は文が上手に読めるようになりたい」と言っていたけど。
そのために必要なのが 「パワーワード」と伝えましたね。見てみる時間はあった?
Mさん:はい。パワーワードとサイレントeを家でやってみました。
鈴木:わあ、すごい!サイレントeも見てくれたんですね。パワーワードについてはどうでしたか?
Mさん:学校で習った単語が多くて、最初から読めたので、逆に「そうなんだ. これって特別なんだ。」と思いました。
鈴木:なるほど。特別な単語と感じたんですね。では、今日は短母音をふりかえり、パワーワードに入りましょう。
読みの正確さと、自分で気づき修正する力
最初に、5番(チェッキング)の単語を確認のために読てもらいました。
前回私がアドバイスした、
・単語の最後の子音をしっかりと発音する
という点もしっかりと意識できていました。
自分で修正する力もついてきました。nutと言う単語を、「ヌット」のように少し迷いながら読んだので、「1文字ずつ確認してみようか」と声をかけると、「n-u-t, ナット」と読み直してくれました。
自分で気づき、自分で修正する。その姿に、学習が内側でつながる始めていることを感じました。
フォニックスルールとパワーワードを並行して学ぶ「ハイブリッド方式」
発音トレーニングブック1 p64からは、「パワーワード」が登場します。
この「パワーワード」は、このテキスト大切にされている考え方のひとつです。
これまで it や is、have などの高頻度語は、「サイトワード」や「例外」として扱われることが多く、ルール学習とは別の位置に置かれがちでした。けれども、実際の英文の中で何度も出会うのは、まさにこれらの語です。
ルールを積み重ねてきた学習者にとって、「これは例外です」と後から知らされることは、ときに混乱や戸惑いにつながることがあります。
Mさんも、「isって特別だったんですね」と、少し驚いた様子でした。
そこでこのテキストでは、高頻度語をあらかじめ「パワーワード」として位置づけ、ルールと並行して扱っていきます。
ルールで読める語
よく出てくる大事な語、パワーワード
この2つをハイブリッド式に並行して学びます。
Book1で43語、Book2で72語。
合計115語のパワーワードは、イラスト付きのストーリーの中で繰り返し出会います。
単語として覚えるのではなく、文の中で、意味の流れの中で、自然に身につけていきます。
前回、Mさんが最後に「単語は読めるようになってきたけど、文をもっと上手に読めるようになりたい。」と言っていましたが、このテキストではこのようにちょうど良いタイミングでパワーワードが登場します。
このコーナーのやり方は以下の通りです。
➀パワーワードを聞こう
②パワーワードを指さしながら読もう
③お話を読もう(〇□△の印をつけながら読む)
中1のMさんは、ある程度単語は知っていて、なんなく3つの印をつけながら読んでくれていました。ただ印象的だったのは、「これって、特別な単語だったんですねえ。」と言っていた点でした。フォニックスルールとパワーワードをハイブリッドで学ぶことで、学習者自身が整理しながら、すっきりしながら進むことができるのだと感じました。そして、パワーワードに慣れることで、英語もよりスムーズに読めるようになるし、読むスピードも速くなる!だんだんと加速度をつけていけそうです。
サイレントeのルール
Mさんがもう一つ自宅学習で取り組んでくれた、サイレントeの単語(p72-81)は以下の手順で学びます。
手順は短母音の時といっしょです。何度も繰り返しますが、パターンが同じなので、Mさんも迷わず自分で進められていました。
サイレントeのルールは
母音字+子音字+eのとき、最後のeはその前の母音字をアルファベットの名前読みにかえ、eじたいは発音しない。
というものなのですが、このテキストでは細かく説明はせず、同じパターンでたくさん読んで単語に親しんでしていきます。
Mさんは、bake, cakeなどの単語をすでに知っているので、「なるほどそういうルールだったのね」という感じで, 気づきがあったと言っていました。
私からは、サイレントeの単語には、印をつけるとより意識しながらできると、とアドバイスしました。
これでBook1は終了です。次のテキストBook2を手にしてくれた姿がとても誇らし気でした。
いよいよ、次回で全5回の試みも最終回を迎えます。
Mさんがこの体験を通して、どのくらい読む力をつけることができたかだけでなく、英語と向き合う気持ちがどのように変わってきたのかにも目を向けたいと思います。
次回に向けての宿題
・Book2 1-12番の2文字子音
・17-22番のStory(私のママはどこ?)
執筆:鈴木美香
津田塾大学学芸学部英文学科卒業後、インクルーシブ教育を実践する東京都の私立総合学園で教職に就き、現在に至る。その間、米国マサチューセッツ州ボストン東スクールに13年間勤務し、現地の子どもたちを指導。米国レスリー大学大学院を修了し、教育学修士号を取得。
2000年に帰国後、mpi英語指導者資格、mpiフォニックス指導者認定を取得し、のちにmpi英語指導者養成セミナー講師に就任。現在はSuzuki English Studioにて幼児から高校生までを指導。
『小中学生のための発音トレーニング - フォニックスで読む力がつく‐』(mpi刊)共著者。
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