2017年2月27日
中3は「書く」力があるって?

小川隆夫
聖学院大学特任講師
J-Shineトレーナー検定委員
中央教育研究所小中高大英語教育プロジェクトメンバー
玉川大学教職大学院講師

レポート:小学校英語の現場から

読者の皆さん、こんにちは。この2月、私はとても貴重な体験をしました。
私の勤務している大学と某英語学校がコラボしてグローバルキャンプを開催したのです。

32人の学生が2月13日から17日の5日間、異文化コミュニケーション体験と英語力アップを狙い、10時から4時半まで英語漬けの生活を送りながら、プレゼンテーションの方法を徹底的に学び、毎日の課題をこなしながら最終日にプレゼンテーションを行うというハードなキャンプに参加しました。彼らは学年も国籍も英語力もバラバラです。
 学内での日帰り英語キャンプですから、夏に行うキャンプのようなキャンプファイアーもダンスもありません。最終目標がグループによるポスタープレゼンテーションです。学生たちはキャンプ最終日に双方の教師・スタッフの前でFood ・Travel・Entertainmentの3つのポイントを取り入れながら観光大使としてその場所を英語で紹介しなければなりません。パワーポイントを使わずに、手作りのポスターで行うことも条件の一つです。

 全員で分担して2枚の模造紙を最大限に生かして魅力あるポスターを作り、役割分担をして全員が英語でプレゼンテ―ションを行わなければならないのです。5分という限られた時間に言いたいことをすべて英語で言うためには相当なリハーサルが必要です。いつの間にか生徒たちは自主的に朝8時に来て、夕方6時半まで残り準備をする日々が続きましたが、最終日まで一人の落伍者もなく頑張りました。 今は仲間と一つの目標に向かって進むという経験の乏しい学生たちが、学年の壁を越え、留学生たちとの国の壁を越えて頑張っている姿は、コマーシャルではありませんが彼らを確実にone up!させたようです。

 さて、今回はもう一つ、2月25日の各紙の朝刊に中3の英語で目標を達成したのは「書く」力のみという見出しが出ました。これは文部科学省が2016年夏に実施した中学3年生の英語力調査の結果を公表したものです。 日本経済新聞によれば、この調査は4技能について行われ、実用英語技能検定(英検)3級程度以上と評価された生徒が5割以上だったのは「書く」力のみだったということです。正確には「書く」50.8%、「話す」31.2%、「読む」25.3%、「聞く」24.8%とか。
 皆さんは、この数字をどうご覧になりますか。

文科省の平成27年度 英語力調査結果(中学3年生)の速報(概要) はこちら
 この調査のテスト内容がどのようなものかわかりませんが、読む力が低いのに書けるでしょうか。書くことは一番難しいと思いますよね。さらに不思議なことに、この調査では「書く」分野で0点の生徒が15.6%もいたということが明らかになっています。この結果の方がより問題かもしれません。
 これから小学校でもいよいよ「書く」ことが始まります。

6年生の最後では「これまでに学習した簡単な語句や基本的な表現で書かれたものの意味が分かり、他者に伝えるなどの目的をもって例文を参考にスピーチの原稿を作成する。」などが年間指導計画例の素案で登場しています。
 I went to Kyoto. I ate Japanese food. It was fun. などの過去形が入り、
 He is good at playing tennis. She can cook well.などのような三人称単数も登場するようです。

 小学校での指導内容がいつの間にかかなりの量になっていました。前述の中学3年生の英語力調査では「英語の学習は好きか」という問いに「そう思わない」「どちらかといえば、そう思わない」との回答が計45.4%になり、前回から2.2ポイント増えているそうです。 中3の半分に近い生徒が、英語が好きではないようです。この現実も真剣に受け止めなくてはならないでしょう。
 その上、英語学習が好きではない理由は「英語そのものが嫌い」が33.7%、「テストで思うような点が取れない」(16.3%)、「文法が難しい」(13.8%)が続いています。
 これから小学校英語で「読む・書く」を上手に取り入れないと中学校に入ってから、英語の学習を肯定的に受け止める生徒が少なくってしまいますね。
 次回は小学校での「読む」「書く」についてもう少し詳しく書こうと思います。

プロフィール

小川隆夫(おがわたかお)
聖学院大学特任講師、J-Shineトレーナー検定委員、中央教育研究所小中高大英語教育プロジェクトメンバー、玉川大学教職大学院講師
立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科修士課程修了、英国立リーズベケット大学英語教授法修士課程修了
鳥飼玖美子氏のもとで「英語コミュニケーション教育」を学び、松香洋子氏を児童英語の師とする。埼玉県内の小中学校で33年ほど勤務し数々の英語活動の実践を発表する。
著書『先生、英語やろうよ!』 『高学年のための小学校英語』(mpi刊)は、小学校の先生方から英語活動のバイブルと呼ばれ圧倒的に支持されている。