2015年8月24日
松香洋子の
私的小学校英語教育論
第5回 What and how
アルファベットの指導

mpi松香フォニックス会長
松香洋子

レポート:小学校英語の現場から

私はこれまでに、アルファベットの指導については、およそ、次のようなことを言ってきました。

①小学校英語は、アルファベットから始めるのではない。その前に、英語で遊ぶ、歌を歌う、会話をする、絵本を読んでもらう等をすべき。
②アルファベットの学習は、歌を繰り返し歌い、文字を指差すことから始めるといい。音声的に指導することが大切。
③アルファベットは、A-Zまでいえるようになったら、Z-Aまでいわせると、1つ1つの文字の名前がいえるかどうかの簡単なチェックになる。
④アルファベットはなるべく早くキーボード上で確認できるのがいい。キーボードはA-Zの順番になっていないが、アルファベットをA-Zの順番通りに使用することは実際にはない。
⑤アルファベットは、名前のスペリングを言ったりする時に必要。また将来的には話が通じない時に、スペリングで言ってもらってわかることもある。しかし、アルファベットの使用そのものは限定的。
⑥アルファベットのフォントや書き順には、あまり拘る必要がない。

なぜ、このような発言を繰り返してきたかというと、日本人はひらがな、カタカナ、漢字という複雑な文字を使うため、文字指導の学習が多い。それは当然ですが、一方、英語には、26種類の簡単な文字しかありません。 それなのに、日本人はアルファベットを書かせるとなると、急にものすごく細かくなり、それに熱中し、アルファベットを静かに書いているという学習をすると、児童も先生もみんなハッピーになってしまうのです。 特に日本人がこだわるのは、次の3点です。この3点は、英語の母語話者でさえ気にしていないし、英語が世界の共通語になって英語使用者が多様化するという状況下では注目度が低いし、コンピュータが多用される時代になって 議論の価値が下がる一方だと感じています。

アルファベットを指導するとなると、日本人が拘る3点

①アフファベットのフォント 英語の文字にも印刷文字、書き文字、大文字、小文字、筆記体など、いくつかの違いがあるのはたしかです。しかし、日本人はとにかく細かい。 その結果、きれいに文字を書く人も多いという良さもありますが、英語圏の人の多くが、大文字、小文字でさえあまりこだわっていない時に、aの文字が曲がっている、曲がっていない、tの文字が跳ねている、跳ねていない、 などとはじめから厳しく指導するのはいかがなものか、と思ってしまいます。英語圏には4線ノートというものが存在していないらしく、WE CAN!という国際的に使用される教材を書いた時には、わざわざ作ってもらうという大騒ぎになりました。
②書き順 これも日本人は細かく拘ります。日頃から漢字の書き順を厳しく指導していると、英語にもそれを反映させてしまいがちです。英語圏の人は書き順には拘らず、WE CAN!を書いた時に、日本人のこのこだわりについて話したら、オーストラリア人の編集長はびっくりして、 世界には書き順の権威が1人だけいる、その人の名前はRosemary Sassoonだと探し出してくれて、何かあったら、この人に聞く、というだけで終わりになりました。
③さらに問題なのが、ローマ字との対応ということです。小学校で学ぶ訓令式と、中学校で学ぶヘボン式。この問題だけでも、大きな議論になります。ヘボン式に統一してほしいです。

結論的にいえば、この3つにこだわり、それに時間をかけるより、アルファベットの指導をするなら、なるべく時間を短くし、楽しくし(歌を歌う、ゲームをする、身体を使っておぼえる等)、もっと大切なことに時間をかけてほしいということです。 英語の学習は4技能を万遍なくとよく言いますが、それは小学校英語の最初から25%とやるという意味ではありません。私個人のイメージとして言うならば、聞く、話す、読む、書く、の比率は、40%, 30%, 20%, 10%ぐらいがいいだろうと思うのですが、いかがでしょうか?

松香洋子プロフィール
英語のコースブックWE CAN!