2013年2月12日
「2013年 “Change”を“Chance”に変えよう!」

小学校英語指導者(J-SHINE)育成トレーナー
枚方市小学校英語指導助手・樟葉小学校勤務
松延亜紀

レポート:小学校英語の現場から

「英語教育が変わる?」こう耳にすると不安に感じる保護者の方がおられるかもしれません。しかし子ども達を導く大人が慌てては目標を見失ってしまいます。これから英語教育に様々な変革(change)が起こるかも知れません。保護者も、教育者も正しい情報や知識を常に持って、子ども達の為に何をどうすべきかを判断していくことが大切になるでしょう。

学習要綱がここ3年で次々改定され以下のようになりました。
(文部科学省ホームページより抜粋)

小学校では「音声を中心に外国語に慣れ親しませる活動を通じて、言語や文化について体験的に理解を深め、・・・コミュニケーション能力の素地を養う」とし、 中学では「言語や文化について理解を深め、・・・コミュニケーション能力の基礎を養う」 高校では「・・・情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を養う」とされています。 25年度から高校ではコミュニケーションの「能力を養う」場面のひとつとして「英語で行う事を基本とする」授業になります。

いずれも「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成」は求められているので、どの段階でも「インプット(知識の取り込み)」だけでなく「アウトプット(知識を使う)」の場面も必要となります。こういった事を幼い頃からたくさん体験しておく事でアウトプットへの抵抗を減らし、使える英語を発揮できるようになるでしょう。ただしアウトプットを急ぐとスキルが未熟な子ども達に「言わせる英語」になります。中学までが十分な「インプット」の時期と言われます。それを前提とした学習形態に加え、スキルを活かす必要な力を子ども達に付けていく事が大切です。
では、そのために小学校英語ではどんな事が考えられるでしょうか?

溝口さんも述べられていたように次の4点を私は大切に感じています。

(1)コミュニケーション活動や発表教育で多くの成功体験を与え、
自己肯定感を与える事
(2)互いのことを知るコミュニケーション活動で人と関わる楽しさを体験させる事
(3)相手に敬意をもって接するという礼儀正しいコミュニケーションの取り方を学ぶ事
(4)伝えたい事を出来るだけ英語を使って伝える事

(1) はコミュニケーション活動で互いを認め合ったり、発表で自分の伝えたいことを一生懸命伝える事で褒めてもらったり、達成感を与える事で自己肯定感を育てます。

(2) は他の学習では体験できないいろいろなクラスの友達と英語を使ったコミュニケーション活動を通して楽しさを感じるのは英語だから感じさせられるのだと思います。

(3) はたとえば何かを手渡す時に黙って手渡すのではなく”Here you are.” ”Thank you.”と言葉を交わすことで気持ちが良かったり、コミュニケーション活動でいきなり聞きたい質問だけを相手に押しつけるのではなく”Hi!”という挨拶を笑顔で必ず交わす事から気分よく尋ね合えるという体験を重ねる事が日々の母語のコミュニケーション能力も育てると思います。

(4) は語彙力に限界がある児童には難しい事ですが、子ども達は「伝えたい」事は一生懸命伝えようと努力し、伝わった時には嬉しそうな顔をします。この繰り返しが言葉を習得する意味を感じさせる上で大切です。

これらは知識として学ぶのではなく体験を通して心で感じて学ぶ体験的学習です。 小学校でこうした体験を多く与えることで本当に伝えたいことが伝えられるようになったときに単なる情報交換だけではなく言葉に気持ちを乗せた心地良いコミュニケーションが取れる人になると思います。

今後英語教育は「使える英語」を目指して加速度を増すかもしれません。小学校では3年生から外国語活動を実施する事で高学年ではもう少し実践的な体験学習を取り組めるようになるかもしれません。どんな変化が起きても忘れていけないのは英語は人の気持ちや考えを伝える道具であるという事です。

これから吹く「変革の嵐」で子ども達が行先を見失わないよう周りの大人たちがしっかり導いて行くために先を見据えた外国語活動を考えていくことが今後一層大切になっていくでしょう。

これから起こる”Change”を”Chance”に変える為に。未来の子ども達の笑顔の為に。