2012年11月5日
小学生の動機付け

J-SHINE小学校英語育成トレーナー
常葉学園短期大学非常勤講師
mpiパートナー会員
溝口良子

レポート:小学校英語の現場から

皆さんが「英語を勉強しよう!」「英語が楽しい!」と思ったきっかけは何ですか?
小学校の高学年の子ども達に、「なぜ、英語を勉強するの?」とたずねると

○ 海外旅行に行く時、話せると便利だから。
○ 将来役に立つとお母さんに言われた。自分もそう思うから。
○ みんなが勉強するから。

今の小学生は、ビックリする程現実的です。
「イチロー選手の様にアメリカで野球がしたい人は?」
「香川選手みたいにイングランドのプレミアリーグでサッカーをしてみたい?」とたずねると、
「そんなの無理でしょ・・・」と冷めた視線。
いつか使う → それって、いつ?
 役に立つ → 何に役立つの?
   みんな → 一体だれ?
子どもは、もっと単純で、身近なものに興味を持つものです。
英語が子ども達にとって遠い所にありすぎる。
いつの間にか、私たち大人の考えを子どもに押し付けているのでは?と思う様になりました。

英語を公用語にした楽天の三木谷浩史氏が「たかが英語」という本を出版されました。
社内英語公用語化した経緯、それに伴う問題点や次なる目標が書かれています。
楽天が非常にクローズアップされていますが、社内英語公用語化している会社は他にもたくさんあり、TOEICの成績によっては昇進できない、就職できないという人たちが実際にいるのも事実です。 英語は手段、英語を使って何をするか?何が出来るか?それが問われる時代がやってきたのです。
三木谷氏は、「日本人には勤勉さがある。技術力も、デザイン力もある。しかし決定的に欠けているものがある。それは、グローバルなコミュニケーション能力だ。」と。
でもこれは、大人の動機。子どもに押し付けてはいけません。

私が通っていた中学校には、1クラス4人ずつ帰国子女の生徒がいました。
アメリカ、ドイツ、フランス、フィリピン等、色々な国で生活していた日本人の子ども達です。
ごく普通の私と変わらない同級生が、英語の時間になると突然輝きだしました。
何を話しているのかさっぱり分かりませんが、子どもの目から見ても、明らかに先生より英語が綺麗で、話し方も手振りや身振りが自然でした。
「カッコいいな~」ガッツ~ンと来た瞬間でした。小さな動機が、今の私の英語人生の出発地点です。
私の場合、同級生でしたが、子ども達にとって身近な人、担任の先生が頑張っている。日本人JTEがかっこいい。背筋を伸ばして、最高の笑顔で子ども達の前に立って下さい。皆さんの役割はかなり大きいですよ。

最近の子ども達は、自分で“きっかけ”を見つけに行きません。
“きっかけ”が向こうから飛び込んでくるのを待っています。
だから一生“きっかけ”をつかめずに終わってしまう子ども達もたくさんいます。
外的な要因で興味を持つと、ず~っと受け身。
いつまでも、口を開けた鯉の様にエサを投げてくれるのをひたすら待ち続けるのです。

本当の“きっかけ”は、自分の内から沸き上がってくるものではないでしょうか。
そこで、「私たち、子どもの英語に関わる者の役割はなにか?」
“いつか”ではなく“今”、声を出したり体で表現する、英語を使える場所を作る。
そして、子ども達に使う目標を明確にし、出来る様になった事を評価してあげる。
この評価は、「上手にできた」「話せた」という漠然とした評価ではなく、
「何が上手に出来たのか」はっきり言う。そして、次の目標に導いてあげる事が大切です。

コミュニケーション能力は、言葉だけではありません。
声や顔の表情/積極的な姿勢/ジェスチャーや体を使って表現する/反応を示す、
コメント、質問する/好奇心をもつ/挑戦してみる/相手を思いやる/サービス精神
/ユーモア・・・
テストでは測れないコミュニケーション能力を評価する事で“自信”がつき、もっと英語を使いたいという気持ちが溢れ出て“将来の動機”に繋がるとうれしいですね。
地道な活動を1日、1日積み上げて行く事しかないのです。
 

中学生や高校生になるとテストに明け暮れ、社会人になれば仕事で英語に振り回される。
小学生の時ぐらい、英語を使って楽しませてあげませんか?
夢を見させてあげましょうよ。
私たちも、子ども達と一緒に夢をみませんか。