記事(レポート:小学校英語の現場から)|子供の英語教材、小学校英語、英語教室、指導者資格

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レポート:小学校英語の現場から
すでに全国小学校の97.1%〈平成19年度文部科学省調査〉2万1220校で何らかの英語活動が行われています。小学校学習指導要領では、「授業の実施に当たっては、ネイティブ・スピーカーの活用に努めるとともに地域の実態に応じて、外国語に堪能な地域の人々の協力を得るなど、指導体制を充実すること」とされています。2011年の高学年の小学校英語必修化に向け、各自治体、学校では様々な取り組みをはじめています。
2009年12月2日
2009年10月1日〜2日
利島村立利島小学校研修記
〜英語活動4年目 1年生〜6年生の楽しい合同授業〜
小学校英語指導者育成トレーナー
mpiセミナー講師・mpi英語教室講師
mpi教育アドバイザー
片山知子
レポート:小学校英語の現場から

 10月1日、晴れ。朝7:40に竹芝桟橋到着。私が乗船する予定の神津島行きジェット船は途中の停泊地のうち利島だけに条件付き就航のサイン。大島到着までの2時間弱の間に「条件付き」が解除されることを祈りながら乗船した。自転車と同じでひとたび走り出してしまえば船体が安定して揺れが少ないものの、出港時と停泊時は化粧室に立つのも禁止されるくらい波の影響をもろに受けるというのが理屈ではなく身を持ってわかった。研修の準備をしながら、ときおりうとうとしている間に大島到着。利島の停泊については何もアナウンスがない。クルーの一人に「利島は条件つきですか?」とたずねると「はい、そうです。」との答え。大島でしぶしぶ下船。船が停止しているのに、どこかにつかまりながら歩かないと先に進めないほど揺れていた。
 副校長先生に教えていただいたとおり、元町港で大島−利島間の料金の払い戻しをして大島空港行きのバスに乗り込んだ。10時半頃、大島空港着。搭乗手続きもボディチェックもスムーズに終えてヘリに搭乗。
 利島ヘリポートで副校長先生が出迎えてくださった。学校到着後に4年生以上の子どもたち、担任の先生方と一緒に給食をいただいた。よそってあったご飯の量にちょっと引きつつも、周囲のペースに遅れまいと(実際はちょっと遅れ気味)頑張って完食。子どもたちは日焼けでみんないい顔色をしていたが、「だいぶ色が抜けたよね」と口々に言うのを聞いて、「真夏はどれだけ黒かったんだろう?」と想像した。

 5校時に全校児童と全学級担任参加の英語活動を参観。今回のT1は、この春に利島小に異動していらしたばかりのA先生。T2は3月のときと同じT先生。6年生のKくんが立派に英語リーダーを務めていた。A先生は利島小にいらしてまだ半年とは思えないくらい授業の進行がお上手で、「利島メソッド」が全校にすっかり定着していることを実感した。今年は新入生が2名。お兄さん、お姉さんたちに負けずによく頑張っていた。1年生から6年生まで一緒の授業は英語活動1年目の学校でも難しい。しかも利島小は英語活動4年目を迎え、今年度から高学年は年間35回の英語活動を実施しているため、ますます学年差は開く一方のはずだ。それにもかかわらず、小学校の先生方もゲストティーチャーとして入っていらした利島中の英語科の先生も、高学年の子どもたちを実に上手く動かして、児童全員が活躍できる授業を展開していらした。今回のT1であるA先生も中学校英語科のM先生も利島に異動されてわずか半年でそうした特殊な環境を活かした授業をなさったのだから、感嘆せずにはいられなかった。
 研修では、先生方と質疑応答の後、学年差を越えた指導は今後も続くため、色々な言語材料に適用できるアクティビティをいくつか紹介。また、先生方の異動があることも考え、過去に紹介した歌やアクティビティも取り入れた。ご存知の先生方にはボランティアとしてお手伝いいただき、初めて経験する先生にはそれをまねしていただくという方法で研修をすすめた。

 研修後は、校長室で茶話会。お菓子とお茶をいただきながら翌日のモデル授業の打ち合わせをさせていただいた。モデル授業でT1を務めてくださるのは、この日に引き続いてA先生。A先生のご要望を最優先に取り入れつつ、他の先生方からのご意見も伺っているうちにモデル授業の大枠が固まった。夕方5時過ぎに利島小を出て、宿泊先まで行き、夕食・入浴をはさんでモデル授業案作成。先生方から色々とご意見を伺ったにもかかわらずなかなかまとまらない。行き詰ったのでいったん就寝。

レポート:小学校英語の現場から

 10月2日。目覚ましが鳴るまでもなく、雨の音で目が覚めた。カーテンを開けなくても外は大雨であることがわかった。だが、このときは授業案を立てることに必死で、帰りの足のことなど考えもしなかった。朝食の時間を迎える頃、何とか授業案がまとまった。8時過ぎに雨が小降りになったので、早めではあったがその間に学校に向かうことにした。「東京にはどうやって帰るの?」「無事にヘリが飛ぶといいねえ。」と女将さんに心配されつつ、民宿を後にした。このときは「ヘリの一機くらい念力で飛ばしてみせる」と妙に気が大きかった。ばかなことを考えていた自分を後で恥じた。

 1校時、ほぼ予定通りにモデル授業終了。T1のA先生には完成した授業案を事前にお渡しする機会もなく、当日の打ち合わせはなかったが、予想よりはるかにスムーズに授業は流れた。この日の英語リーダーは5年のMちゃん。すっかりリーダー慣れしていて、ゲームでもボランティアで先生役を務め、絵本の内容に関するクイズにも積極的に答えていた。ボランティアの先生役と言えば、1年生のYちゃんが先頭を切って Let me try! と手を挙げてくれたのは嬉しい驚きだった。

 予定では中休みの時間にミニ研修を行ってから出発することになっていたのだが、モデル授業が終わった時点では、利島発のジェット船だけでなく、ヘリも条件付の運航のため、行程が一から変更となった。下田から神津島に向かう客船で利島から新島に移動し、新島からは元々乗る予定だったジェット船の便で竹芝に向かうのが一番確実、という副校長先生のご判断。
 モデル授業を終えて校長室で研修や授業の振り返りをしていると、私の帰りの足を確保するため、あちこちに連絡してくださっている副校長先生の声が職員室から聞こえてきた。新島行きの乗船手続が10時半なのでミニ研修をやっている時間はない。急遽、中止となった。自分はそんなに日頃の行いが悪かったか、と落ち込んでいたところに副校長先生から嬉しいお知らせを頂いた。ついさっき一緒に授業をさせていただいたA先生が所用で内地(島の人たちは「内地」とか「本土」と言う)にいらっしゃるので、竹芝まで同行してくださるとのことだった。心強かった。「ミニ研修ができないので、竹芝に着くまでの間にAに研修内容を伝えておいてください。船内と新島でデートしながらマンツーマンの研修をお願いします。」と、こういう事態でも冗談が言える副校長先生のおかげで緊張がとけた。

 10時半、利島小を後にした。外は相変わらずの大雨と強風。それでも下田からの客船は無事に利島に到着。2階デッキからの乗船に驚きつつ、A先生と一緒に2等客室に落ち着いた。新島まで1時間。船が出港すると間もなく大揺れ。10分ほどでA先生も私もすっかり船酔いして、船内研修どころではなくなった。新島到着まで2人とも横になっていた。

 新島に到着するとさっきまでの嵐は何だったのかと思うほどの晴天。だが、新島から見える利島はやはり雲がかかっていて、頂上が見えなかった。
 1時20分。快晴の中、ジェット船は新島を出発。A先生は1階船室、私は2階船室だったため竹芝到着まで別行動。とはいえ、私と同様、A先生も船内では熟睡なさっていたようだ。ジェット船は朝の時点で条件つきだった利島にもちゃんと停まった。無意識のうちに「ただいま〜」と心の中で唱えていた自分が可笑しかった。次に大島に停まると、さっきまでがらがらだった船内の人口密度が一気に倍くらいになったような気がした。船体が安定すると再び眠りについた。次に目を覚ましたときにはフジテレビのあの独特な形の社屋が見えて「ああ、戻ってきたな(戻って来ちゃったな)」と現実に引き戻された感じがした。船を降りて再びA先生と合流。この後、立川方面に向かうというA先生と新宿までご一緒させていただいた。

 行きのジェット船も帰りのジェット船もヘリコプターも「条件つき」だらけだったが、結局は全部予定通り動いたらしい。個人旅行ならそうしたある種のギャンブルを楽しむのも悪くはないだろうが、仕事となるとそうは行かない。今回も事前に丁寧な行程表を作ってくださったうえにこの日の想定外の事態にも対応して朝からてきぱきと動いてくださった副校長先生にはまたしても大変お世話になった。日程調整や研修内容の相談など窓口になってくださった外国語活動担当のK先生、利島から新島経由で完璧なエスコートをしてくださったA先生、利島中英語科のM先生、そして利島小の児童のみなさんと先生方に感謝すると同時にもう一言 ― “I hope to see you again.”