愛知県春日井市立神屋小学校 教諭 加藤拓由
2009年2月2日
キレイごと抜きの現場報告
小学校だから!できること 第7回
マイナスから立ち上がる担任たちが
日本の子どもの未来をつくる 【前編】
愛知県春日井市立神屋小学校
教諭 加藤拓由
レポート:小学校英語の現場から
編 授業以外に、英語の環境づくりで工夫されていることはおありですか。

加藤 この点については、まだまだこれからの課題です。何しろ、本校は、「担任中心の英語活動をどのように進めたらいいか」という最も基本的な課題にこれから取り組もうとしている段階です。本当は、全校インプットとして、毎日、英語の歌を流したり『英会話たいそう』をしたりできるといいのですが、まだ学校全体として「やりましょう」という風向きにはなっていません。 英会話たいそう

幸い、国際理解の担当として、国際理解教室の管理を任されていますので、教室内にアルファベットカードやピクチャーカード、外国のポスターや絵を貼るなど、どこの学校でもやっているくらいのことはやっています。

あとは、先生たちの英語活動への理解を深めるために、あちこちに散逸していた英語活動に使えそうな教材やビデオ、英語の絵本などを、こっそり少しずつ国際理解室に持ち込んで、わざと目に触れるように陳列しています。そうすることで、先生たちに「あぁ、こんな教材があるんだ」と気付いてもらえたらと思っています。

見えないプレッシャーや空気との戦い

編 英語活動を率先して進めることの難しさは感じていらっしゃいますか。

まず、一番大きいのは「小学校に英語なんか必要ない」という議論との戦いです。これは「誰がこう言った」というのではなく、世の中全体に渦巻く、目に見えないプレッシャーとの戦いと言ってもいいかもしれません。

実際、多くの公立小学校の現場では、「英語なんかにかまっている余裕はない!」というのが本音だと思います。基礎学力の定着、問題行動への対応、行事などの準備、新教育課程への対応、難しい保護者対策、果ては教員評価や教員免許更新制の導入など、今の現場はめちゃくちゃ大変なのです。

そこに入って来たのが、小学校の教員には“免許外”の英語です。これも誤解を恐れずに、敢えて喩えるならば、「あなたは日本人でしょ。日本人なら柔道や剣道はやったことあるよね。だから、今から柔道の審判をしなさい」と言われたようなものでしょう。
ほとんどの日本人が中高の体育の授業で柔道や剣道はやったことはありますが、それでいきなり「試合の審判をやれ」と言われてもそれは無理でしょう?というようなことが英語活動でも言えるのです。

それから、「英語をしゃべる」ということに対する日本人独特の感覚というか、「空気」みたいなものがあるような気がしてなりません。

中学校の教員をしていた時のことです。ある日、クラスにアメリカ帰りの帰国子女が入ってきました。彼女はネイティブ並の発音でした。英語の教科書をCDのようなきれいな発音で読んでくれました。しかし、クラスのみんなは、賞賛するかと思いきや、彼女の発音を聞いて、何やらヒソヒソと話していや~な雰囲気で反応しました。次の時間から、彼女は教科書を読むときに、たどたどしい日本人読みをするようになり、結局、中学卒業まで一度もあの美しい発音が聞かれることはありませんでした。